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雇用流動化若者けん引

転職する若者が増えている。新型コロナウイルス禍で雇用環境が厳しい中、成長性が高い分野をめざす動きが活発だ。入社後に短期で転職すれば十分経験を積めない懸念があり、会社も育て始めた人材の流出は損失が大きい。それでも社会全体で生産性を高めるには成長分野への人材シフトが欠かせない。若い世代の動きが他の先進国に比べて低い日本の流動性を高める可能性がある。都内在住で社会人4年目の男性(26)は5月、IT(樹法技術)セキュリティー会社に転職した。新卒で入った旅行会社の仕事が激減して不安が募る中、コロナ下でも需要が伸びるITを新しい職場に選んだ。専門知識を身につけたら「また転職してステップアップしたい」と話す。国内の転職市場はコロナ禍で足元では停滞している。総務省の労働力調査によると、2020年の転職者は319万人と前の年に比べて約1割減った。国の雇用調整助成金などで失業が抑制される一方、人材を必要とする成長分野への移動も減っている。若者に目を向けると状況が異なる。入社3年以内に退職する人は約15万人にのぼる。17年の大卒では全体の32・8%と前年比0・8ポイント増え、過去10年で最高になった。(日本経済新聞7月4日)

厚生労働省は8月末まで助成を延期していた雇用調整助成金を9月末まで延期する。さらに「10月以降の助成内容については、雇用情勢を踏まえながら検討し、8月中に知らせる」と発表した。雇用の維持が強化されれば、流動化は足踏み状態に入るが、若年層では流動化の流れは止まらない。昨今の大学生は就職活動時に、新卒入社した会社に数年勤務して次はどの会社に転職する、というプランを描いているという。旧世代が聞けば「新卒で入った会社で満足に務まるかどうかも分からないうちに、いったい何を考えているのか?」と反応するだろう。だが、キャリア形成の常識が変わったのである。リクルートの調査によると、3年以内離職率が過去最高を記録した。流入元と流入先を見ると、異業種への転職が多い。コンサルティング業界にはIT通信、金融、建設・不動産から、インターネットにはIT通信、マスコミ・広告、外食・店舗型サービスから、建設・不動産には電機メーカー、外食・店舗型サービス、消費財・総合商社からの転職が多い。建設・不動産は流入元にも流入先にもなっている。それだけ流動化が進んでいる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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