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パソナ、外食・観光から2000人出向受け入れ

パソナグループは新型コロナウイルス禍で打撃を受けている業界からの出向者を2千人規模に倍増させる。2022年春までに外食や観光などの業界から人材を受け入れる。人件費も負担し、業務請負サービスに活用する。コロナ下の出向受け入れとして最大規模とみられ、雇用の一時的な受け皿となる。これまでに航空やホテル、ブライダル関連など約30社から1千人弱の出向を子会社のパソナが受け入れた。同社の中尾慎太郎社長は「タクシー会社などからも相談が増えており、21年度には2千人以上に増やす」と明らかにした。標準的な出向期間は3~6カ月。コロナによる業績悪化などを受け、間接部門やコールセンター関連のコストを減らすために業務を外部委託する企業が増えている。自治体からはワクチンの接種に関連した事務員への需要が多く、パソナでは人手が足りない状況だ。余剰人員が生じている業界から足りない業界へ一時的に人材を橋渡しする。コロナの就職が見通せないなか、社員を一時出向させる流れは様々な業界に広がっている。日本航空(JAL)では現時点で約1600人のグループ社員が企業や自治体に出向している。(日本経済新聞7月3日)

在籍型出向のニュースには助成金活用の事例が紹介されないが、新型コロナウイルス感染症の影響で事業を縮小する企業に対して、厚生労働省は産業雇用安定助成金と雇用調整助成金を交付している。産業雇用安定助成金は①出向運営経費(出向元企業および出向先企業が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費の一部)②出向初期経費(就業規則や出向契約書の整備費用、出向元企業が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先企業が出向者を受け入れるための機器や備品等の整備等の出向の成立に要する措置を行った場合)。雇用調整助成金は、出向元企業が出向労働者の賃金の一部を負担する場合、①出向元企業の出向労働者の賃金に対する負担額②出向前の通常賃金の1/2の額――このいずれか低い額に助成率(中小企業2/3、中小企業以外1/2)をかけた額を助成する。助成金の活用事例も報道されば、さらに在籍型出向が促進され、雇用維持にもつながるはずだ。ただ、出向元も出向先も、あまり公にしなくない手段だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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