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「過労死ライン」柔軟適用 厚労省指針

 厚生労働省は脳・心臓疾患の労災認定の評価法を見直す方針だ。残業が「過労死ライン」といわれる月80時間に達しなくても、それに近い残業や労働時間以外の負荷があれば、業務関連性が強いと評価する。時間の目安を硬直的に適用するケースがあり、労働基準監督署に柔軟な対応を促す。
厚労省の検討会が22日、報告書案を示す。2001年に通達で示した現行基準は、労災認定する残業(時間外労働)の目安を①発症前1~6カ月間.で月45時間を超えて長くなるほど業務と発症の関連性は強まる②発症前1カ月間に100時間、2~6カ月間で月80時間を超える場合は関連性が強い――と定める。
 労働時間だけでなく、勤務形態や職場環境、業務内容などを加味して評価するとしていたが、2019年度の脳・心臓疾患の労災216件のうち、残業が80時間未満だったのは23件にとどまる。弁護士の団体などが見直しを求めていた。
 基準を月80時間から引き下げる案も浮上したが、報告書案は残業時間の目安は「引き続き妥当」と明記した。
(日本経済新聞 6月22日)

 残業時間の上限規制について、傍目にはビックリするような法改正が実施された。さる
5月21日に成立した改正医療法である。改正の目玉は医師の働き方改革で、医師の残業時間の上限が年間1860時間に設定された。
日本外科学会の調査では「医療事故・インシデント」の原因で「過労・多忙」が81・3%を占めている。年間1860時間の残業は過労死ラインの約2培だが、医師の健康管理は医療安全に直結する。
どんな経緯で1860時間に至ったのか。医師の働き方改革検討会の構成員として改正に関わった医師に論拠を聞いてみた。
「ベストシナリオは一般労働者に適用される年間720時間以内という上限規制だと思う」
ただ、上限を年間720時間に設定すると、地域医療が崩壊しかねない。この2つの両立を前提に勤務医の残業時間を調査したところ、勤務医20万人のうち年間残業時間が2000時間を超える勤務医が10%いることが分かった。2万人である。
 この医師によると「まずはこの2万人の残業時間を削減することを必須要件として、医師と地域医療の双方を守る着地点として上限1860時間に至った」という。医師は特殊な職業とはいえ、過酷を極めている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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