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ℨ世代、温泉地で変革生む

 

観光地などに滞在しながら仕事する「ワーケーション」を新規事業の開発に生かそうとする企業が増え始めた。インターネット接続大手のビッグローブは専用のサテライトオフィスの整備を進める。都会のオフィスでは生まれないアイデアを引き出しイノベーション(技術革新)につなげる狙いだ。
(中略)
ビッグローブは社会課題の解決を支援する新規事業の可能性に着目する。その一つが地球温暖化対策だ。あらゆるものがネットにつながる「IOT」など通信関連の技術を生かし、企業の生産設備などの温暖化ガスの排出を抑制する事業などを検討する。担当者が別府に合宿して、くつろいだ雰囲気の中で議論し、既存事業の延長線上にない発想を生む狙いだ。
(中略)
 ワーケーションの効果は確認されている。NTTデータ経営研究所(東京・千代田)などが20年6月、沖縄県で実施した実証実験では3日間のワーケーションを体験した人の生産性は平均20%上昇し、ストレスは37%低下した。定量化しにくいイノベーション創出の効果は十分検証されていないが、その可能性に着目する企業は増えている。
(日本経済新聞 6月21日)

 ワーケーションには働き方改革や新規事業創出が期待できるが、観光地にとっては関係人口の増加という効果を期待できる。人口減少対策のソリューションとして「関係人口」という概念を提唱したのは「ソトコト」編集長の指出一正氏である。
 昨年末、指出氏にインタビューさせていただく機会があった。指出氏は、関係人口を増やすためには「関わりしろ」が必要で、そこには「自分ならこうするという内発性や創造性を誘引するザラザラ感がある」と指摘した。
「街のサービスが全て行政主導で行われている所では、関わりしろは生まれづらいのです。自分事として街を考えている世代の人達が少なからずいることが、街がおもしろくなる大きな要素です」
 さらに「関わりしろがとりなすのは弱さの交換」と付言したが、「弱さの交換」とは何だろうか。
「お互いに困ったなという課題をどんなコミュニティでも持っています。俺たち年を取っているなとか、仲間が減っているなとか。年を取ればグループの中に変化が起きて、今までできていたことができなくなったという課題が、個人だけでなくコミュニティにも起きています」
「その一方で、若い人達がマウンテンバイクやスノーボードで遊ぶ場所を探しているけど、大人達が理解してくれないという問題があります。お互いに弱いものを持っていて、その弱いものを交換して、例えば『うちの裏山が空いているから、スノーボードをやってみたら?』と言えば、若い人達が喜んで遊びます」
 企業が地方に根づくためには、こうした視点をもってほしい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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