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離職者を人手不足産業に コロナ下で新興勢力動く

新型コロナウイルス禍で職を失った人材を人手不足の産業に移動させようとする動きが新興企業の間で広がる。飲食業などの離職者を大量採用し、再教育したうえで介護業界に派遣したり、「在籍出向」をオンラインで仲介したりするビジネスが登場。今後、雇用調整助成金の縮小が予定される中で、中小企業の雇用維持に一役買いそうだ。
東証マザーズ上場の人材会社キャリアは今後1年間で1000人を雇用する計画だ。飲食や観光、航空といったサービス業を離職した人材に加え、就職先を探している学生などを対象にする。正社員として採用し、1カ月~1カ月半の研修を実施した後、介護施設や病院などに派遣する。
勤務先に在籍したまま、出向の形で人材を受け入れる「在籍出向」も支援する。介護業界はコロナ前から人手不足が続く。在籍出向は航空大手などが先行して取り組んでいるが、受け入れ先を探す手間など人事担当者の負担は少なくない。キャリアが間に入り、中小企業にも活用を促す。
(中略)
 新興勢力がマッチング支援に乗り出す背景には、業種により労働需給に差が出ていることがある。日本・東京商工会議所の調査(回答は3001社)によると、建設業は全体の67・6%、介護・看護業は65・4%の企業が「人手が不足している」と答えた。一方、宿泊・飲食業は「過剰である」が23・8%に達した。
(日本経済新聞 6月9日)

労働移動は本人にとってはリスクが大きく、当面の生活設計のために一時的に異業種に転職しても、雇用情勢が回復すると元の業種に戻ってしまうことも少なくない。リーマン・ショックの後に頻発したパターンである。
だが、人手不足に苦しむ業種にとっては、離職リスクを承知の上で雇用を強化しなければならない。政府も労働移動に向けて動き出した。
厚生労働省は今年2月5日、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する「産業雇用安定助成金」を創設した。
対象は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向。 雇用維持を図るための助成のため、出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことが前提である。
助成内容は、「出向運営経費」として出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など。 出向中に要する経費の一部を助成する。
また「出向初期経費」として①就業規則や出向契約書の整備費用②出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練③出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの出向の成立に要する措置を行った場合――に助成する。
この制度の窓口はハローワークだが、企業にとって手続きという手間が発生する。人材サービス会社がハローワーク対応もサポートしながらマッチングに動けば、労働移動の促進が期待できる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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