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「特定技能」外国人7倍 技能実習生、帰国できず移行


「特定技能」の在留資格で働く外国人が急増している。2月末時点で2万人超と前年同期の約7倍となった。新型コロナウイルスによる渡航制限で帰国できない技能実習生が、特定技能の資格を取得。外国人労働者の来日減による人手不足を補おうと企業が採用を増やしている。技能実習は最長5年の期間限定だが、特定技能に移って長く働く外国人が増えつつある。 
(中略)
 特定技能は出入国管理法改正で2019年4月に導入された。人手不足が深刻な介護、建設、宿泊など14分野で即戦力の外国人を受け入れるためだ。特定技能の資格を得るには主に▽技能実習を修了▽国内外の試験に合格――の2通りがある。
 政府は特定技能(1号)の受け入れで「5年間で最大34満5150人」を想定したが、伸び悩んでいた。外国人にとって、各分野の技能や日本語能力の試験への合格が必要などハードルが高いためだ。企業にとっても、特定技能よりも、原則として転職できず人材流出の可能性が低い技能実習生の採用を優先してきた実情がある。
 ところが特定技能の人数は、この1年余りで急増している。出入国在留管理庁によると、2月末時点で2万386人。政府の目標にはほど遠いものの、前年同期(2994人)の約7倍となった。(日本経済新聞 5月8日)

 雇用主にとっては外国人労働者を自社に縛れる技能実習制度のほうが使い勝手はよいが、外国人労働者にとっては転職の自由は担保しておきたいはずだ。実習制度が奴隷制度として国際的にも批判されたのは、実習という制度の趣旨から実習先の変更(=転職)が認められず、理不尽な扱いを強いられる事案が頻発してきたからだ。
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」第3条に「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と規定され、厚生労働省の担当官もシンポジウムやセミナーで訴え続けてきた。
だが、現実は人手不足対策で、それは一向に変わらなかった。制度と現実のかい離は是正不能な段階にまで進んでいる。その状況で新たに創設されたのが特定技能で、こちらは転職が可能だ。
創設された当初から、技能実習生から特定技能への移行が進み、技能実習制度は特定技能に吸収されて2つの制度が一本化されるのではないかという見方もあった。その流れがコロナ禍で一気に進んだのである。雇用主は退職リスクも想定しなければならず、健全な就業環境の整備に迫られている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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