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雇用のミスマッチ拡大 失業者の30%「望む仕事ない」

日本の労働市場で雇用のミスマッチが拡大している。総務省によると仕事に就きたくても「希望の仕事がない」との理由で失業状態が続く人が3割で高止まりする。失業が1年以上に及ぶ人も増える。新型コロナウイルスの感染拡大が長引くなか、短期的な失業抑止のための助成制度から、労働移動を促す仕組みへの転換が求められる。
総務省が14日に発表した労働力調査(詳細集計)によると2021年1~3月の失業者214万人のうち、「希望する種類・内容の仕事がない」と答えた人は64万人と30%だった。19年は20%台後半だったが、新型コロナの感染拡大が雇用市場に影響を与えた20~21年は3割台が続いている。
就職を希望するが求職活動はしていないという人も、全体の37%にあたる95万人が「適当な仕事がありそうにない」と理由を答えている。一方で、出産・育児や介護・看護のために求職活動していない人は大きく減った。
新型コロナウイルスの感染拡大が長期化するなかで、雇用吸収力が大きかった飲食店や宿泊など一部のサービス業は雇用が蒸発。他方で医療・福祉などは直近の21年3月も有効求人倍率が2~3倍とコロナ下でも引きは強い。デジタル・トランスフォーメーション(DX)に関連した職種も求人は堅調だが、働き手の希望やスキルが一致せず、労働移動が進まない現状だ。
(日本経済新聞 5月15日)

 労働移動が進まない要因は、総務省調査で明らかになった「希望する種類・内容の仕事がない」と考えている失業者が多いことだが、その背景にはポータブルスキルを持っていないか、あるいは持っていても気づいていないことが挙げられるだろう。
ポータブルスキルとは、厚生労働省の定義によると、業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能な能力」。畑違いの業種に転職しても目を見張るような活躍をする人は、ポータブルスキルの持ち主である。ビジネスパーソンとしての基礎力がしっかりしているので、当該業種や商品・サービスの知識さえ仕入れれば、ツボを押さえてすぐに課題解決力を発揮する。
とかく異業種からの転職者に対して「前職では活躍しても、この業界は特殊だからどうか?」と懐疑的な見方をする風潮もあるが、ポータブルスキルを持っていれば業種・職種の壁を難なく乗り越えられる。あるいは本人は壁を感じていないかもしれない。要はビジネス偏差値が高いのである。
現状では労働移動が進まなくとも、生活危機が迫れば背に腹は代えられない。誰もが何かしら職に就く。ミスマッチのリスクもあるが、新しい仕事をモノにしようと必死になれば、やがて戦力として評価されるようになっていく。
雇用側も一定の猶予期間を与えないと、ミスマッチを繰り返すだけである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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