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加賀電子、在宅勤務手当を遡及して支給

 

半導体商社の加賀電子は、過去に遡って在宅勤務手当を5月7日に支給した。期間は新型コロナウイルスによる通勤自粛が始まった2020年4月から21年3月までの12カ月。1人当たり月額3000円で、グループ従業員のうち在宅勤務の約1500人が対象だ。
既に21年4月から、月額3000円の在宅勤務手当の支給を始めている。在宅勤務の浸透でオフィスの賃借料や光熱費、通勤費を削減できていることから、今回、過去分についても支給することで従業員に還元した。
加賀電子の足元の出社率は3~4割で、2割までに抑えることを目指す。オフィス光熱費、従業員の交通費の削減で、年1奥苑以上のコストを削減できる見込みという。本社にオフィスを集約することで、賃借料の削減も進めている。
加賀電子は従業員の在宅勤務の定着を積極的に進めていく方針だ。在宅勤務下での適切な人事評価や、従業員同士のコミュニケーションのあり方を検討している。
(日本経済新聞5月13日)

 政府はテレワークの推進を呼びかけているが、職場の実態から政府の呼びかけには簡単には応じられない企業が多い。リクルートワークス研究所によると、今年1月の緊急事態宣言下でテレワーク実施率は25.4%だった。2020年4月に発令された1回目の緊急事態宣言下での実施率は32.8%だから、7.4ポイント低下した。
 テレワークをしない理由で最も多いのは「職場で認められていない」で、この回答は1回目の緊急事態宣言下でも最も多かった。テレワークでは業務を遂行できないか、あるいは遂行に支障をきたすなどの事情を抱えているのだろう。
 テレワークはビジネスモデルと対になっている。業務フローの見直しには限界があり、ビジネスモデルを改革しない限り、テレワークがこれ以上進むとは思えない。
 とくに営業活動では、テレワークの限界がある。AIシステムを手がける都内のITベンチャーでは、営業先からオンライン商談を求められない限り、原則として訪問している。同社の営業担当者は「たんなる情報提供や簡単な打ち合わせならオンラインで十分だが、スペックの変更や見積の折衝などは対面でないと難しい」と話す。
 訪問営業の結果、同社の売上高はこの1年で前年比1.5倍近く伸びたという。これは一例に過ぎないが、同様のケースは少なくないはずだ。だからテレワークは政府が望むようには進まないのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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