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改正会社法の開示義務で、賠償責任保険の拡充も

企業が役員に与えるリスク補償と報酬に、従来以上の透明性が求められるようになっている。3月に施行された改正会社法で開示が定められ、株主総会の招集通知などで掲載が必要になった。役員は適切にリスクを取って業績向上に努めているのか。株主が厳しい目を注ぐ。
2020年秋、大手IT(情報技術)企業から、三井住友海上火災保険の担当者に相談が寄せられた。「サイバー攻撃の増加など経営を巡るリスクの高まりに対応するため、補償を見直したい」
 この会社が求めたのは会社役員賠償責任保険(D&O保険)の契約内容だった。支払限度額を引き上げ、補償内容も追加した。D&O保険は、役員が会社に損害を与えたとして、株主から損害賠償を求める訴えを起こされた場合に備えるものだ。会社が保険料を負担し、役員は裁判対応や賠償に必要な費用に補償を受けられる。
(日本経済新聞 5月3日)

東京海上日動のホームページにD&O保険の対象となる異例が紹介されている。①関連会社の負債を肩代わり②従業員の不正取引③従業員のインサイダー取引④役員の不正会計指示⑤長時間労働による過労死⑥提携関係解消による訴訟による訴訟―この6分野である。
役員の業務はいわばリスクマネジメントである。「毎日がリスクマネジメント」とも言えるだろう。
だが、当の役員や企業はどこまで自覚しているのか。
上場企業の有価証券報告書に記は「事業等のリスク」という項目を見ると、まだリスクマネジメントが上場企業にすら十分に浸透していない現状が反映されている。自社のリスクについて具体的に列挙し、各リスクについて経営に及ぼす影響と対策が明記する企業もあれば、経営リスクの一般論を書いただけに過ぎない企業もある。
そういう企業では、いざリスクが発生したら、どう対処するのだろうか。コンサルタン。トに丸投げすれば一時的に凌げるだろうが、知見がストックされない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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