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キャリア官僚志願者14.5%減 過去最大、働き方影響

2021年度の国家公務員採用総合職試験の申込者数は1万4310人だった。人事院が16日発表した。20年度と比べ2420人(14.5%)減った。5年連続の減少で、総合職試験を導入した12年度以降で最大の減少幅となった。女性の申込者は5772人で、全体に占める女性の割合がはじめて4割を超えた。
 「総合職」は省庁幹部候補としてキャリアと呼ばれるが、志願者の減少に歯止めがかからない。長時間労働などが背景にあるとみられる。人事院の担当者は今回の志願者減の要因のひとつに「霞が関の勤務環境」の影響をあげた。
今国会で政府が提出した法案やその参考資料で誤字脱字などのミスが相次いで発覚した。業務の効率化の遅れや長時間労働が一因との指摘がある。
内閣人事局は20年12月に正規の勤務時間外の「在庁時間」を調査した。20年10~11月、20代総合職の3割が過労死ラインの目安とされる月80時間超だった。
人事院は20年度の新人キャリア官僚に優秀な人材の獲得に必要なものを聞いた。複数回答で75%が「超過勤務や深夜勤務の縮減」と答えた。
若手キャリア官僚の離職傾向も高まっている。人事局の調査で、自己都合を理由に退職した20代総合職は19年度に87人いたとわかった。6年前から4倍に増えた。別の人事局調査では30歳未満の若手男性職員の7人に1人が数年以内に退職する意向を示した。
(日本経済新聞 4月17日)

国家公務員の給与水準は民間企業の平均給与をゆうに上回っている。贅沢さえしなければ、生活設計には困らない水準である。だが、キャリア官僚の同級生の多くが就職する各業界の上位ランク企業に比べれば低い。さらに外資系コンサルティング会社や金融機関に比べれば相当な開きがある。
だから長時間労働に比して低賃金で割に合わないと考えてしまい、志願者が減ってしまうのだろう。一方、若手キャリア官僚の離職傾向が高まっている背景には、こうした割に合わないとう判断だけではなく、20代の勤め人全体に見られる転職志向も影響を与えているのではないだろうか。
 そのうえ残業代の問題がある。コンサルタント会社「ワーク・ライフバランス」の調査(回答・国家公務員316人)によると、今年3月の給与で「残業代がすべて正しく支払われていない」という回答は28.2%にのぼった。
 「支払われていない」と回答した人の心境変化(複数回答)は「結局は変わらないという諦めの気持ちを感じた」が71%ともっとも多かった。「仕事へのモチベーションがより下がった」が42%、「辞めたいと思うことが増えた」が33%。
 こうした実態は学生にもリアルな情報として伝わっているはずである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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