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セゾン自動車火災保険、管理職を公募制に

ネット損害保険のセゾン自動車火災保険は2021年度から、管理職ポストを公募に切り替える。部課長の定期異動を原則廃止し、早ければ新卒3年目でも課長に昇進させる。専門人材の登用を通じて、中長期的に親会社である損害保険ジャパンからの出向者が幹部の大半を占める体制を見直したい考えだ。
職務内容に応じて人材を雇用するジョブ型雇用を導入する一環で、全部門の部課長ポスト77人を公募の対象とする。任期は1年とし留任の場合も再公募する。社内公募が少なく、人員を確保できない部門がある場合は人事部が指名する。
 部長の年収は成果に応じ2割の増減幅を設け、課長の年収も成果に連動させる。成果は各部と経営企画部で事前に決めた目標の達成度で測る。
 公募制を1年間運用したうえで22年度から早ければ新卒3年目でも課長に昇進させる。今までは課長への昇進は最速で8年目としており、実際は15年目程度で就く事例が多かった。
(日本経済新聞 3月31日)

 上昇志向は組織人の本能だと思っていたが、どうも違ってきた。「長」の付く役職名への固執が減じただけでなく、昇進による収入増にも惹かれない層が増加しているようだ。昇進にともなう負荷と収入が見合わないとみなされているからだ。
収入は増やしたいが、一定以上の責任は背負いたくないのだが、ワークライフバランスを理由にそんな社員が増えたら、組織の活力はしぼんでしまう。本人にとってマイナスになる局面もある。たとえば40歳を過ぎて転職する場合、求人側が求めるのは管理能力なので、それまでに管理職経験がないと不利になる。
ただ一方で、管理職に就任してリーダーシップを発揮したいと考えている社員もいるが、上司に恵まれなければ就任の機会を与えられにくい。どんな評価制度を設けても、公正な人事が実施されるとは限らない。人事とは社内政治そのものである。
その点、立候補制ならスッキリする。若手を抜擢できるチャンスが増える。立候補して希望がかなって管理職に就任して、成果を出せなければ降格されるだろうが、その程度のリスクを覚悟しないと潜在能力の発揮は期待できない。上位の役職ほど就任リスクをともなうものだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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