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70歳就業、準備進まず 中小の同一賃金も遅れ 雇用関連制度4月導入

企業での働き方に大きな影響を与える雇用関連制度が4月1日に導入される。
 「70歳就業法」とも呼ばれる改正高年齢者雇用安定法の施行と、中小企業への「同一労働同一賃金」の適用だ。いずれも多様な働き方を認めて自由に選択できる環境を整えるものだが、準備が進まない企業が多いのが実情だ。  
企業は現在、希望する従業員全員を65歳まで雇用する制度を整備しなければならない。これに加え、4月以降はさらに70歳まで就業させる制度の導入に努めることが義務化される。定年制の廃止や定年の引き上げ、継続雇用制度の導入などの選択肢がある。  
厚生労働省の調査によると、66歳以上でも継続して働ける企業は昨年6月1日時点で3社に1社にとどまる。みずほ総合研究所の堀江奈保子主席研究員は、60代後半の就労希望が全て実現すれば、就業者数を約70万人押し上げる効果があると分析。「社会保障制度を支える側が増えるメリットがある」と話す。  
改正法の施行を控え、4月1日から継続雇用の上限を70歳まで引き上げる地方銀行の百五銀行(津市)のような動きもある。ただ、帝国データバンクが先月実施した改正法施行への対応を問う調査では、「考えていない」との回答が32.4%に達し、「分からない」も14.9%と多かった。
(時事通信 3月26日)

漫画「サザエさん」に登場する磯野波平は、連載開始時の1951年に54歳だった。厚生労働省の「生命表」によると、1951年の日本人の平均寿命は男性60.80歳、女性64.90歳。当時の定年退職年齢は55歳だから、仕事を辞めて5年後に亡くなるのが平均的なパターンだった。
この時代には、老後の生活設計を考える必要がなかったという。それどころか老後という概念も希薄だったようだ。
この時代から70年が経った。社会保障財源が逼迫し、公的年金の受給年齢を引き上げるべく、70歳から受給を開始すれば増額されるというキャンペーンが展開された。定年延長を法制化しなければ、受給年齢引き上げの環境が整わない。
75歳定年時代の到来は時間の問題だ。あの手この手で生涯現役を促進する施策も展開されるだろうが、企業にとっては厄介である。高齢社員の雇用にコストパフォーマンスをどう見出すか。
補助業務に配置しても、極端に給与を引き下げれば意欲の低下を招き、退職されかねない。総人件費が重荷になってくることは間違いない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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