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金融・商社社員1万人を地方の中企業に派遣

政府は22日の経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)で、新型コロナウイルス対策で再発令した緊急事態宣言の解除を受け、今後の経済再生策を議論した。菅首相は「最低賃金をより早期に全国平均1000円とすることを目指す」と強調。東京一極集中の是正と地域経済の活性化を目指し、大企業から地方の中小企業への人材派遣を強化するため、「政府系ファンドを通じて金融機関や商社などから1万人規模の人材をリストアップする」と述べた。
 諮問会議は、今夏に策定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」への反映を目指し、議論を進める。
 2020年度の全国平均の最低賃金(時給)は902円。最も高い東京都の1013円に対し、最低の秋田、鳥取、島根、高知、佐賀、大分、沖縄の7県は792円にとどまる。会議では民間議員が地域間格差の解消に向け「地方の最低賃金のボトムアップ」を要請した。賃上げの流れを地方や中小企業に広げ、非正規労働者の処遇改善につなげる。
(時事通信 3月22日)
 
都会から地方へ、大企業から中小企業へという人材の流れは、それぞれの活性化にとって合理的にも見える。格差の是正もなり得る措置だ。
だが、それは本人が地方移住や中小企業での就業を望む場合に限られよう。本人が望むのならよいが、飛ばされたと受け止める人も相当多いはずだ。派遣なので期間限定だが、なし崩し的に転籍を強いられないとも限らない。
しかもエース級の人材は異動の対象にならず、中高年の余剰人員を中心に派遣されるだろうから、地方の中小企業にとって、どれだけ期待できるかわからない。住めば都の理にしたがって活躍するかどうかは本人次第だが、本人次第であるだけに読めない。
そもそも地方の中小企業が、経済財政諮問会議のシナリオを望んでいるとも思えない。ローテーションで派遣人材が定期的に入れ替わるのでは利は少ない。一方、金融機関や商社の若手社員にとっては、国の政策の駒に利用されているようで、乗り気になれないのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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