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ANA春闘、年間ボーナス「最低でも1か月分」絞り込み要求

全日本空輸(ANA)の労働組合「ANA労働組合」は3日、2021年春闘で、年間ボーナスを「最低でも月額給与の1か月分」とする要望を経営側に提出した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)も求めず、最小限の要求に絞り込んだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年も旅客数の大幅な回復は見込めないと判断した。
 ANAの春闘では例年、ボーナスは夏冬それぞれ月給の2か月分(計4か月分)の支給で妥結していた。新型コロナの影響が出始めていた昨年の春闘は要求自体を見送り、支給日直前に夏のボーナスは前年実績の半額となる1か月分、冬はゼロとすることで妥結した。
 昨年は20年ぶりに月給の一部削減にも踏み切り、社員の年収を3割超削減することになった。
 ANAの国際線はコロナ禍前と比べ9割減の状態が続く。親会社であるANAホールディングスの21年3月期の連結最終利益は、5100億円の赤字を見込む。今後の航空需要が見通せないため、組合は経営側に回答期限を設けない「要望」にとどめた。
 航空大手の春闘を巡っては、日本航空(JAL)最大の労組「JAL労働組合」が1日、年間ボーナスについて、夏冬それぞれ月額給与の1か月分(計2か月分)の要求にとどめることを決めた。20年春闘の要求から半減させた。
(読売新聞オンライン 3月3日)

「平均年収.JP」によると、ANAホールディングスの今年度平均年収は789万円。30代で723万円、50代では865万円だった。特別高くはないが、贅沢をしない限り生活設計には問題がなく、この時期、賞与が支給されるだけでも御の字である。だが、これは一般論だ。
 危機管理意識の高い人は高水準の給与を得ていても、生活水準を過度に引き上げず、有事に備えて内部留保を強化する。高額な住宅や自動車の購入を控えるなど消費喚起策にはなびかないが、多くの勤め人にこの意識を求めるのは難しい。
現状よりも裕福な生活を求めるから労働意欲が喚起され、高い成果を出せるのであり、禁欲は労働意欲の低下につながりやすい。慎ましい生活をつづけるために、なぜ懸命に働かなければならないかと。生活水準の設定はあくまで平時を前提にするものだ。
バブル崩壊やアジア通貨危機、リーマン・ショックなど歴史的な経済危機を経験しても、なお平時を前提とした生活設計のあり方は変わらない。有事対応への学習効果は得られず、
余禄であるはずの賞与の有無に一喜一憂するのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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