Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

コロナ下の雇用ミスマッチ

新型コロナ下で雇用不安が高まるなか、雇用のミスマッチの解消が大きな課題となっている。感染拡大に伴い、苦境に立たされる業種と逆にニーズが高まる業種の「二極化」が進む今日、人手過剰な職種から人手不足の職種への雇用シフトは、雇用の安定には不可欠な施策といえる。ただ、ミスマッチの解消には、2つの視点が必要である。
一つは、コロナ下で発生した雇用のミスマッチには一時的なものも少なくないという点である。感染拡大は飲食、旅行、娯楽など、本来は健全な産業に大打撃を与え、その多くで人手過剰が発生した。しかし、これら業種は、もともと人手過剰であったわけではない。雇用調整助成金を活用しながら雇用を守ると同時に、人手不足の職種へ職員を一時的に出向させることで、感染終息後にスムーズに元の仕事を再開させるための仕組み作りが必要と言える。
ただ、コロナ下で顕在化したミスマッチは一時的なものだけとは限らない点も同時に重要である。感染拡大に伴い、デジタル化の遅れなど日本経済がこれまで抱えてきた構造的な問題が顕在化し、ポストコロナ時代に向けた課題も浮き彫りになっている。
(日本経済新聞 1月15日)

失業者に対する異業種への雇用シフトに向けて、ハローワークもマッチングを強化している。全国544カ所に開設しているハローワークのうち、101カ所に設置されている「人材確保コーナー」を第二次補正予算で103カ所に増設した。さらに三次補正で8カ所を増設し、新年度には計111カ所に増える。
人材確保コーナーは、医療・福祉(介護・保育)、建設、警備、運輸など人手不足の顕著な分野に対する求職者の拡大を図るとともに、事業者の求人を支援してマッチング機会を拡充している。
求人者に対しては、求職者ニーズの把握と求人充足に向けた助言・指導、未充足求人への個別フォローアップを実施している。求職者に対しては、担当制による職業相談・職業紹介、求人情報や最新の業界動向を情報提供して、夜勤が可能かどうかなど勤務形態も確認している。
さらに関係機関・業界団体と連携して面接会を実施している。たとえば介護分野に関してはツアー面接会を開いて、介護事業所を見学して、介護ロボットを体験するなどして職場を実感できる機会を提供しているという。
だが、コロナが終息して雇用情勢が回復すれば、転職者たちの多くが元の業種に戻ってしまう可能性も高い。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。