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在籍のまま社員出向、政府が助成金で後押し コロナ機に「雇用シェア」強化

雇用関係を維持しながら他社に従業員を出向させる「在籍型出向」を推進するため、厚生労働省は、出向元と出向先双方の企業を対象とした「産業雇用安定助成金」を創設する。8日に閣議決定する政府の追加経済対策に盛り込む。新型コロナウイルスの感染拡大で、業績悪化が著しい企業では外部出向で雇用を維持する「雇用シェア」の動きが広がっており、こうした労働移動を強化する狙いがある。
出向への国の助成は、企業が従業員に支払う休業手当の一部を助成する雇用調整助成金(雇調金)にもあるが、対象は出向元企業だけで、額も休業助成と比べて低い。このため従業員の出向よりも休業を選ぶ企業が多いことから、新設する産業雇用安定助成金では出向元だけでなく、従業員を受け入れやすくなるよう出向先も対象に含めて負担を軽減する。助成額や上限額については、来年3月以降に段階的に縮小する予定の雇調金の特例措置と大きな差が出ないよう制度設計を進めている。
これに伴い、企業間の人材のマッチングを行う公益財団法人「産業雇用安定センター」の体制拡充も図る。2021年度予算の概算要求に計上していたが、前倒しで実施する。
(毎日新聞 12月6日)

雇用シェアは日本の事業文化にはなじみやすい。人件費カットや世代交代を目的に、消耗品のように社員を切り捨てる人事がつづいているが、組織の求心力低下は避けられない。多くの社員が現職を腰かけと考えるようになれば、組織力は低下してゆく。
それでも人員削減に踏み切らざるを得ないほど窮状にあえぐ企業が多いのだが、雇用シェアが普及すれば企業と社員の双方にメリットが出るだろう。業績が悪化した場合、雇用継続か退職かの二者択一ではなく、柔軟な雇用体制を運用できる。
ただ、この仕組みは数合わせのようなものだから、出向元の企業が対象者を選別して送り出すとは限らない。人材スペックを提示されたところで、質よりも数が優先しそうだ。ミスマッチも頻発するはずだ。
しかも出向元の業績が回復せず、社員を戻せない場合はどうなるのか。片道切符も想定されるが、雇用が確保されるだけよいと割り切らざる得ないケースも出てこよう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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