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大手銀の行員・OBを1000人規模で地銀に派遣へ…政府が新制度

政府は、地方銀行などの地域金融機関や地方企業に対して、大手銀行が行員やOBなどどの人材を派遣する制度を設ける方針を固めた。高い専門性を生かし、地域経済の活性化に貢献してもらうのが狙いで、将来的に1000人規模の派遣を目指す。12月にまとめる新しい経済対策に盛り込み、2020年度第3次補正予算案に約30億円を計上する。
制度は、官民ファンド「地域経済活性化支援機構」(REVIC)が運営する。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクなどが登録した人材リストに基づき、地方銀行などが人材派遣を要請する。REVICは仕事の内容や地域性などに応じた研修などを行う。政府は、元の企業で働いていた時よりも賃金が下がる場合は当面の間、差額を補う。
政府は地域金融機関や地方企業に派遣した人材について、期限付きの出向でなく、原則として派遣先で長く働き続けてもらいたい考えだ。都市部から地方に移る人の流れを作り出すことで、東京一極集中を是正し、地域活性化にも役立つとみている。
(読売新聞オンライン 12月2日)

1997年にさかのぼる。この年、都市銀行の北海道拓殖銀行が破綻して、第二地方銀行の北洋銀行に吸収された。いわば格下の傘下に収まったのだが、このときテレビで流れたニュース番組で
北洋銀行の武井正直頭取は、いささか憤った口調で「拓銀の行員は北洋銀行の行員よりも有能だという見方があるようだが、北洋銀行の行員よりも有能ではないから破綻したのではないか!」と喝破した。
この発言を聞いた北洋銀行の行員たちは、おそらく留飲を下げたのではないのか。
政府がメガバンクの行員やOBを地銀や地方企業に派遣しようと計画しているのは、人材のランクを上下で評価しているからだ。メガバンクの余剰人員も地銀や地方企業ならエース級の人材として処遇されると考えているのかもしれない。
余剰人員の受け皿と見なされている側は、この制度に対して積極的に向き合うだろうか。
この制度は地方銀行の再編統合策としてメガバンクの系列下に組み込み、同時にメガバンクのリストラの受け皿にする目的が潜んでいるようにも見える。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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