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大手行、中小に人材橋渡し 三菱UFJ 顧問紹介で提携

人手不足に悩む中小企業に対し、大手銀行が人材の紹介を通じて支援する動きが広がっている。三菱UFJ銀行は、事業会社の役員OBらを中小などに送る顧問名鑑(東京・中央)と組み、取引先の新規受注や経営改善を後押しする。三井住友銀行は取引先間の人員の過不足を補い合うサービスを始めた。取引先の収益改善を進め、金融サービスの拡大につなげる。
三菱UFJ銀は11月、顧問名鑑と業務提携を結んだ。顧問名鑑は、取締役や部長といった役職の経験者を顧問として紹介している。現在2万1000人以上の候補者が登録しており、取締役以上の役職経験者が5000人以上を占める。これまで7000人以上にサービス提供の実績がある。
三菱UFJ銀が人材難に悩む取引先の生産効率の改善や販路拡大といった経営課題を見極め、顧問名鑑のサービスに取り次ぐ。紹介手数料は取らず、企業が顧問名鑑と業務委託を結ぶ。
日本政策金融公庫が2019年11月に実施した調査によると、調査対象だった三大都市圏の中小企業の60%が今後の不安要素として「人材の不足・育成難」を挙げた。
(日本経済新聞 11月26日)

定年退職者を中小・ベンチャー企業に顧問として紹介するニュービジネスが台頭しつつある。顧問候補の人材は、おおむね大手企業もしくはグループ企業の取締役経験者である。実務実績をベースとしたノウハウ提供を期待されているのだ。
先頃、3人の顧問候補と面談する機会があったが、3人とも説明能力にすぐれ、聞き上手でもあった。名のある企業で昇進しただけに、有能であることはすぐにわかる。顧問に就いてくれたら心強いのではないか――そう思わせる3人だった。
ただ、顧問の起用で成果を出すには、起用する側が信頼関係を結ぶことに留意したい。顧問に何を期待するかはケースバイケースだが、多いのが新規顧客の開拓である。大手企業幹部として培った人脈に期待しているのだ。
しかし期待通りに次々に営業先を紹介してもらおうとすると、空回りになってしまうようだ。顧問紹介を行っている人材紹介会社の社長によると「顧問にとっては人脈を食い散らかされているような心境になってしまう」という。
「まず営業手法を教えてもらうことからはじめたほうがよい。提案内容の組み立て方、提案の仕方、フォローアップの仕方、営業組織の強化、営業計画の立て方、PDCAサイクルの廻し方など教えてもらうことはいろいろあるはずだ。いきなり人脈の開示を求めるのは信頼関係を築いてからにしたほうがよい」(同社長)
顧問業は定年退職者のセカンドキャリアとしても人気を集めている。メガバンクが顧問紹介に参入することで、ひとつのマーケットができれば、経営コンサルティング会社にとっては有力な競合相手になる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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