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20年の賃上げ企業、9年ぶり減 8.7ポイント低下、コロナが宿泊・飲食直撃

厚生労働省が25日発表した賃金引き上げ実態調査によると、2020年中に賃上げを実施した企業(見込みを含む)の割合は、前年比8.7ポイント低下の81.5%となった。新型コロナウイルス感染拡大が宿泊・飲食サービス業などを直撃したことが響いて9年ぶりに減少し、13年以来の低水準となった。下落幅はリーマン・ショック直後の09年(12.3ポイント)以来の大きさ。
同省は「企業は一般的に前年業績を踏まえて賃金改定を決めるので、すぐに方向転換できない」としており、コロナの影響は今後本格化するとの見方を示した。
宿泊・飲食サービス業は30.6ポイント低下の49.3%で、賃上げ企業の割合が最も低かった。全体の1人当たりの平均改定幅は、前年を652円下回る月4940円の増額。7年ぶりに5000円を割り込んだ。
賃金改定を実施しない企業は9.5%、引き下げた企業は2.1%でいずれも急増した。改定を決める際に重視した要素は「業績」(49.0%)が最も多く、「雇用維持」(8.0%)が「労働力の確保・定着」(同)と並ぶ2番目に浮上した。
(時事通信 11月25日)

コロナ禍にあって、2020年中に賃上げを実施した企業は81.5%、賃金改定を実施しない企業は9.5%、引き下げた企業は2.1%という結果は意外にも見える。ただ、賃金改定は前年度実績に基づくため、2~3月の業績がよほど落ち込まない限りダウンしない。
懸念されるのは21年度で、20年度の業績悪化を踏まえれば、相当数の企業が賃下げをせざるを得ないだろう。
だが、大企業トップの報酬はさほど減少していない。日本経済新聞(11月25日付け)によると、デロイトトーマツグループと三井住友信託銀行の調査で、2020年の大企業社長の報酬額(中央値)は9887万円。6年ぶりに前年比を下回ったが、減少幅は0.6%だった。業績連動型や株価連動型の報酬なので、21年度には減少幅が拡大する見通しだ。
ただ、自主返上や減額の動きも出て、この調査に対して、小売業を中心に23%の企業が社長報酬の減額や自主返上を実施または検討中と回答したという。20年中に賃上げを実施した企業は81.5%だから、実施しなかった企業は18.5%で、社長報酬の減額または検討中の23%と同水準に近い。
賃上げを実施しなかった企業の社長は、みずから報酬額の減額を申し出ているのだろうか。倫理観をもった社長が多いことを望みたい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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