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ANA、トヨタに社員出向受け入れ要請へ…3500人削減

全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングス(HD)が27日に発表する事業構造改革案の全容が判明した。トヨタ自動車を含む数社に社員出向の受け入れを要請し、一時的な人員圧縮を図るほか、採用凍結などで2022年度までにグループ全体の社員を3500人程度減らす方針だ。
ANAHDは固定費の3割を占める人件費の削減が急務となる一方、新型コロナウイルスの感染収束後を見据えた社員のつなぎとめも重要な課題となっている。出向受け入れの要請を受けたトヨタなども、検討を始めた。
(読売新聞オンライン 10月25日)

 これは雇用維持にシェアリングエコノミーの考え方を導入した事例だ。しかしANAブランドの社員だからこそ出向を受け入れる企業があったのだろう。 たとえばANAに限らず客室乗務員出身者には接遇コンサルタントとして活躍している例が多いが、出向先には顧客とのコミュニケーションスキルに期待しているのではないか。
 出向先は自社の社員よりも高いスキルを保有しているか、異質のスキルを保有していることを期待できるから受け入れるのである。この苦境期に、取引上のお付き合いで受け入れる判断は下さないだろう。
 ANAグループの経営改革では、もっぱら出向が報道されているが、10月27日に発表した「新しいビジネス・モデルへの変革」と題する雇用維持施策には、3つの施策が盛り込まれている。
 ①海外に委託していた航空機やエンジン等の整備作業や、グループ会社から更に外部に再委託していた空港ハンドリングなどの外注業務を内製化②各拠点における事業規模の変化に伴い、空港会社間の人事異動などにより生産体制を最適化③グループ役職員の報酬・賃金・一時金の削減や、休業・休職制度の拡充などの人件費抑制策を労働組合に提案。
 他社に出向した社員は業績回復時にはふたたびANAグループに戻るという出向人事だが、その時期はいつなのか。業績が回復しても出向者の全員を戻せる水準に届くのか。不透明な状況がつづくが、それでも雇用が維持されるのだから恵まれている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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