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三井住友銀、取引先間の人材融通支援

三井住友銀行は人材に余剰感が出ている取引先企業の雇用を支援する。人材が不足している別の取引先を探し、双方の希望があえば出向してもらう仕組みをつくる。新型コロナウイルスの影響で雇用の維持が厳しくなる企業が増える一方、IT(情報技術)や医療・介護、物流など人手不足感が強い業界もある。雇用の過不足を緩和することで取引先の収益改善につなげる。
全国に約10万社ある取引先から雇用の過不足を聞き取り、従業員の出向を実施したい企業と、受け入れを希望する企業の情報を集める。社会人の再就職支援などを手掛ける公益財団法人の産業雇用安定センターにその情報を渡し、人材をマチングしてもらう。月内に会する予定。
(中略)
従業員の移行に反する出向とならないよう、出向元企業は同意を個別にとるか、就業規則などで条件をあらかじめ定めておく。出向した従業員の待遇は原則として出向前の水準を維持し、賃金の支払いは双方の企業が協議して分担を決める。
(日本経済新聞 10月19日)

労働力の過不足を改善するには、産業間の労働力移動を促す以外にないが、人手不足に悩む業種に就職希望者が殺到する動きが出ている。
日本経済新聞(10月20日付け)によると、ローソンが墨田区錦糸町駅周辺にオープンした新店舗のアルバイト・パート従業員募集に350人が応募してきた。全店舗の応募数は、4月は前年同月比184%増、5月は71%増、6月は73%増、7月は45%、8月は82%増。セブン―イレブン・ジャパンでは4月の応募者数が前年の2倍に達した。飲食業から人材が移動しているという。
飲食店とコンビニは比較的親和性が高い職場なので、コロナ禍で失業した労働者が移動しているのだろう。
だが、外国人技能実習生や特定技能人材が就労する業種は、日本人には不人気業種ゆえに、失業者もなかなか応募してこない。特定技能の制度化が議論されている渦中に、介護施設経営者がこう危惧していた。
「特定技能の対象業種は日本人に人気がなくて外国人労働者に頼らざるをえないのだが、今度は外国人労働者に頼らざるをえない職場という理由で、ますます日本人が避けてしまう業種になりかねない」
この現状がつづく限り、労働力の過不足は改善されない。三井住友銀行が取引先間の人材融通を支援することは有効な取り組みである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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