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損保ジャパン、課長昇進、20代も可能に

損害保険ジャパンは年功序列から脱却する新たな人事制度をつくった。細切れだった役割等級を整理し、等級ごとの在任年数の目安も撤廃した。早くても40歳前後だった課長への昇進を10年ほど早め、仕組み上は20歳代での登用も可能にする。働き方改革を進め、社員それぞれの希望や能力に応じた処遇を実現する。
年功序列など日本型の雇用慣行はピラミッド状の人事体系と密接に結びついている。データサイエンスなどの専門職や研究職ではスキルや能力に応じ処遇するジョブ型雇用が少しずつ進んできたが、大手企業が全社的に年功中心の仕組みにメスを入れるのは難しい。
金融業はIT(情報技術)との融合など大きな変化に直面しており、実力のある若手の登用を迫られている事情もある。三井住友銀行は1月に人事制度を改定し、最短30歳で管理職に就けるようにした。
損保ジャパンは今回、5区分あった役割等級を3区分に改めた。「特命課長」「業務課長」「副長」など複数のポストを廃止し、約1万人の肩書を変える抜本的な対策となる。
(日本経済新聞 10月14日)

グーグルの最高幹部経験者を取材したときに「グーグルの人事評価は成果のみ。組織力を強化するためには、年齢、性別、国籍は関係ない。必然的にそうなる」と語っていた。
グローバル競争の是非はともかく、実態として存在する以上、その土俵で競争しなければならない企業にとって、もはや日本型雇用慣行の美徳に固執する余裕はない。グローバル市場で事業を展開している企業の人事制度が、外資系企業に近づいていくのは、いわば必然の流れである。
人事制度は優勝劣敗・弱肉強食という冷徹な論理で組み立てられ、自助・共助・公助でいえば自助至上主義になる。人事評価に温情は期待できない。職場としてはハイリスク・ハイリターンで、
高給を得るチャンスがある一方で、わずか数年で燃え尽きてしまう可能性もある。
ブラック企業に見えないこともないが、社員にその認識はない。給与水準が高く、成果を出せば報いてくれるからだ。それに稼ぐこともさることながら、起業や転職のステップとして、ビジネス力を培う目的で入社するので、就社意識が希薄なのである。
こうした職場を望む若者は一定程度いる。しかも有能だ。日本企業が外資系企業への人材流出を防ぎたいと考えるのなら、損害保険ジャパンのような抜擢人事は不可避である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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