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外国人実習生の介護仲介組合 全国初の破綻 コロナで68人入国できず 大分・中津

ベトナムやインドネシアから来日する外国人技能実習生に介護の仕事を紹介する「九州介護支援事業協同組合」(大分県中津市/中川正宗代表理事)が近く、大分地裁中津支部に自己破産を申請する。新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限のため、実習生が来日できず、事業継続の見通しが立たなくなった。新型コロナの影響により、外国人実習生を受け入れる団体が経営破綻するのは、全国で初めてとみられる。
「これから利益が出るはずだった。こんなことになるとは」。破産準備に追われる男性職員(59)は肩を落とした。  
組合の設立は2017年。外国人技能実習生の介護職種への受け入れが解禁された年だった。慢性的な人手不に悩む介護業界に、実習生の需要があるとにらんで組合を立ち上げた。東南アジアから実習生を受け入れ、介護施設に紹介し、1人あたり月2、3万円の監理費を得ることで事業への参入を狙った。
「初めの1、2年はひたすら投資だった。慣れない中、トラブルもあった」と男性職員は振り返る。ベトナムの送り出し機関と契約を結んだが、悪徳業者にだまされ、実習生が来日しないこともあった。  介護分野という業界にも壁があった。工場であれば1事業所で10~20人程度のまとまった人数の実習生を受け入れられるが、介護施設では1施設で数人が上限の場合がほとんど。大勢の実習生を紹介することが困難だった。
(毎日新聞 9月27日)

ついに監理団体が破綻した。監理団体は外国人技能実習生が来日できなければ仕事にならない。監理団体は非営利団体なので、もともと収益性は低い。破綻もさることながら、解散する団体がつづくことも懸念される。
同時に外国人労働者に頼らざるをえない業種は前途多難である。「デジタル化による業務の効率化」を提言されても、現場の就労実態がなかなかデジタル化に対応できない。たとえば介護現場でもっとも労力を要する業務は三大介助(食事介助、入浴介助、排泄介助)だが、これをロボットが代替することは、現時点では想像がつかない。
しばらくの間、人手不足のまま供給能力の範囲で事業を継続するのか。それとも経営統合によって大規模化を図り、体力を強化するのか。

一方、政府が描く新たな社会像も遠のいていく。外国人技能実習生や特定技能を受け入れて「多文化共生社会」をつくることが、政府が示した社会像である。その上位概念が「地域共生社会」だ。
共生という言葉は昔から「競争から共生へ」というようにひんぱんに使用され、使い古されているが、抵抗感をもたれにくい。外国人労働者の受け入れでも、たんなる人手不足対策ではなく、新たな社会をつくるというビジョンを示したのだ。ただ、コロナ禍で道筋が見えなくなった。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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