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人手不足産業に「出向」  政府、労働移動支援に軸足

雇用政策の軸足が、これまで働いてきた企業での雇用維持から、人手不足の産業への移動支援に移り始める。政府は2021年1月から雇用調整助成金の特例措置を段階的に縮小するのに合わせ、業種を超えた出向や新たなスキルの習得を後押ししていく。「失業なき労働移動」に成功するかどうかが経済回復のカギを握る。
新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の収縮で、企業が内部に抱える休業者は一時600万人近くに膨らんだ。政府や従業員に休業手当を支払う企業を支援する雇用調整助成金の特例措置で雇用維持を図ってきたが、人手不足の産業への労働力移動を妨げるとの指摘も出てきた。

このため、厚生労働省は25日に決めた21年度予算の概算要求に労働力移動を支援するメニューを盛り込んだ。
国と都道府県の職業能力開発施設や、NPOが運営する教育訓練機関の教育費用を負担する。職を一時的に失った人が無料で職業スキルを学び、すぐに再就職できるようにする。要求額は990億円とし、政府が予算案を決める年末の段階で積み増すこともできるようにした。
(日本経済新聞 9月26日)

厚生労働省によると、7月の有効求人倍率は前月比0.03ポイント低下の1.08倍。6年3カ月ぶりの低水準で、求職難のトレンドは総務省が発表した7月の完全失業率でも裏付けられた。前月比で0.1ポイント悪化の2.9%だった。

まさにコロナ失業時代だが、一方で人手不足がますます深刻化している介護業界。厚労省が8月に発表した2019年の施設介護員の有効求人倍率は4.31培(前年は4.02培)、ホームヘルパーは15.03培(前年は13.10培)だった。

ヘルパーが直面するのは人手不足の進行だけではない。高齢化も進んでいる。60歳以上が39.2%を占め、70歳以上は全体の10.5%におよんでいるのだ。3年前の調査結果では、60歳以上が36.4%、70歳以上が6.6%だったので、とくに70歳以上の割合が高くなっている。

介護はひとつの例だが、大失業と大人手不足が並行して進んでいるのだ。このギャップを埋める手段として、かねてから産業間の労働移動が提唱されている。だが、そう簡単に移動は進まない。
人手不足の職種はおしなべて低賃金・過重労働である。この問題を解消しない限り、人は集まらない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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