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岐路に立つコンビニ 目標は圧力に変わった

ono20200929

ローソンでは3月、本部社員が18年度に店で収入印紙を大量に購入していたことが全国で40件以上発覚。1人で100万円以上買ったケースもあった。後で収入印紙を売却するため、換金率の高い金券ショップの情報は社員同士がメールで共有までしていた。

不正の一因には本部の人事評価制度がある。たとえばローソンでは手掛けた新規出店が多いほど賞与が増えた。ただ、出店した翌月の1日当たりの売上高が予想の80%以下ならば1店に数えず、65%以下ならばマイナス1店とみなした。

出店しても売上高が落ちれば自分の賞与が減りかねない。「数値目標が社内で無言の圧力になった」との見方は多い。
セブンは創業以来初めて、店舗を回る本部社員の人事評価制度を刷新した。今冬の賞与から3千人以上が対象で、評価基準の中心を売上高や利益から、オーナーへの支援内容など業務プロセスの達成度にした。セブン幹部は言う。「企業である以上、業績を第一とする考えは正しい。ただ、新型コロナもあり事業環境は一変した。コンビニ本部のあり方を見直すタイミングだ」
(日本経済新聞 9月22日)

日本フランチャイズチェーン協会の調査によると、コンビニエンスストア大手7社の2020年8月の既存店売上高は前年同月比6%減。6カ月連続で減少した。既存店の来店客数も6カ月連続で減少し、前年同月比9%減だった。
ウィズコロナへと移行するなかで、コンビニの業績は下げ止まりがつづくのではないか。人事評価方法も見直さないと、社員は疲弊する一方だ。
業種にもよるが、売上ノルマの達成に迫られて、社員が“自腹営業”に暴走するケースは昔から散見される。目標達成のために会社関係者をしばしば顧客として動員した外食チェーンでは、動員に応じることが会社への忠誠心を試す踏み絵にも利用された。
当然、どの会社も自腹営業を公式に指示しない。推奨もしない。だが、暗黙のルールとして定着しているのだ。社長以下の経営陣は黙認するだけである。
社員を禁じ手にまで追い込むのは経営陣の責任である。歴史的な経済危機にあっても、なお業績一辺倒の評価をつづければ、不祥事の頻発につながりかねない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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