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企業のシニア活用策 「やる気」刺激する評価を

ono20200915

人生100年時代に備え、70歳までの就業機会の確保が来年4月から企業の努力義務になります。現行65歳まで雇い続ける義務がありますが、さらに70歳になるまで働き続けられる配慮を企業に求めます。経験豊富なシニアは貴重な戦力である一方、緊張の糸が切れた無気力シニアの扱いに戸惑う職場も増えています。どうすれば60歳以降もモチベーション高く働いてもらえるか。企業も対策に本腰を入れています。
大日本印刷は2021年度に60~65歳の選択定年制を導入します。65歳を上限にいつ定年するかを社員が選べる制度です。現在の定年は60歳で、定年後65歳まで再雇用する仕組みはあります。ただ再雇用後は現役時代と仕事内容が変わり、給与も激減します。正社員として働ける期間を延ばして、60歳以降のやる気を刺激する狙いです。
19年4月に定年の年齢を60歳から65歳に引き上げた明治安田生命保険はシニア社員の意識改革に力を入れます。毎年58歳社員を対象に研修を実施。キャリアを振り返るとともに新たな目標を設定させ、挑戦を促します。60歳以降でも管理職に昇格できるように人事制度も見直しました。「あきらめていた管理職に挑戦し、実際に昇格した60代社員もいます」(広報部) 
(日本経済新聞 9月7日)

 60歳以降の再雇用社員の就労意欲を引き出すには、現役時代と同等の基準で業務分担と評価を実施することに尽きるだろう。未知の業務に挑戦して新たなスキルを開花する人もいるだろうが、スキルを習得するまでは若手・中堅社員の足手まといになりかねない。
その空気を否応なく察知する本人にも、退職を迫るために、あえて不慣れな業務を与えられているような心境に傾きかねない。
 手慣れた業務に就けば、スキルや人的ネットワークを活かせる。就労意欲にプラスになるだけでなく、若手・中堅社員にも現役時代の蓄積を継承できる。次世代の役に立っていることを実感できれば、再雇用で働く喜びも見出せるはずだ。
DXが進めば再雇用者の蓄積を活かせる機会は急速に減っていくだろうが、DXがたんなるIT化にとどまっているうちは、活躍の余地はいくらでもある。
そもそも再雇用者の意欲をどう引き出すかという問題は、定年という雇用制度があるからだ。多くの人が子育てを終える50歳を区切りとして、あと何年勤務するかは自分で決めればよいのではないか。ただ、シニア社員の存在が若手・中堅社員の重石にならないように、役割分担を明確にすることが肝要である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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