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人材登用、脱生え抜き

「イノベーションは小さな組織でこそ起きるが、日本は開業率が5%台と低く、起業する人が少ない。生え抜き人材ばかりで組織を固める閉鎖的な社会であること、世の中を変えるのは難しいという絶望感が原因ではないか」
「大企業や官庁の幹部は生え抜きで、ソフトウエア開発などで外部から専門人材を採用する動きは鈍い。そのため起業や転職で成功したロールモデルが少ない。規制や慣習がイノベーションの導入を妨げ、行政のデジタル化など本来あるべき変化が起きていない」
「改善するには人材の流動性を高めることだ。どんどん職業を変えることを肯定する考えが必要だ。企業や官庁も一度出て戻った人材やスタートアップ経験者を活用すべきだろう。夫婦の共働きがしやすい環境を整えることも、リスクを取って起業や転職に挑みやすくするには重要だ」
(日本経済新聞 7月20日)

上記はフリーの佐々木大輔社長の発言である。「生え抜き人材ばかりで組織を固める閉鎖的な社会」という指摘は合点できる。“組織の常識=社会の非常識”という通弊におちいりやすいのである。

組織は固有の文化が定着するが、理念やミッションを朝礼などで読み上げるような会社には(我が社の考え方こそ正義)という妄信が生じやすい。会社にとっては生え抜き人材ほど浸透させやすいので、新卒社員を安定的に採用できるようになると、純血主義を志向するようになってゆく。
しかも会社によっては、社内固有の言葉を(共通言語)と称して、なかば使用を義務づける。だが社外で使用されると違和感このうえなく、「それは日本語では、どういう意味でしょうか?」と問いたくころとも少なくない。

要は求心力を強化する手段を誤っているのだが、純血主義の組織ではその誤りに気づきにくいのだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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