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介護サービス 継続綱渡り

大学、専門学校で医療や介護を学んでいる学生は資格を取得していなくても現場で活躍できる。
「こうした人たちのネットワークをつくることも一手。最低限の技能や知識を身につけられる研修を自治体で開催して担い手を育成してもいい」
厚生労働省によると、25年度に介護人材は34万人不足するとされている。国はこれまで外国人材の受け入れで補強しようと計画してきたが、コロナ禍のように世界全体を襲う危機が訪れれば実現は容易でない。「外国人材への依存はもはや万能薬にならない。介護人材の賃金向上、待遇改善という根本的な問題の解決を急がなくてはならない」と野口教授は強調する。
介護保険の自己負担は原則1割。日本では医療や介護に大きなコストがかかるとの意識が非常に薄い。介護の供給破綻を避けるには「介護人材の労働に見合うだけの報酬を社会全体で、私たち1人1人が負担していく覚悟が必要だ」と訴える。
(日本経済新聞 7月4日)

この記事にある野口教授とは、社会保障論が専門の早稲田大学教授・野口晴子氏である。「外国人材への依存はもはや万能薬にならない。介護人材の賃金向上、待遇改善という根本的な問題の解決を急がなくてはならない」という指摘には同意する。

収益源をインバウンド需要にシフトした観光業が構造転換を迫られているが、人手不足対策の突破口を外国人労働者の雇用に求めていた企業も、雇用構造の転換に迫られている。介護業界もそのひとつだ。国内人材の雇用を強化するには賃金水準の向上が絶対条件だが、介護報酬がアップしない限り、それは叶わない。来年4月は介護報酬の改定期で、目下、社会保障審議会介護給付費分科会で報酬改定の議論が進んでいるが、コロナ禍で国家予算を大量に投入した状況で、介護報酬財源を十分に確保できるのか。

直近2回の介護報酬改定はプラス改定だったことから、次回の改定率はマイナスかもしれないという予想もあるなかでのコロナ禍である。クラスター対策に奮闘する介護職の処遇改善は喫緊の課題だが、問題は財源だ。厳しい改定は避けられないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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