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雇用制度 在宅前提に

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新型コロナウイルス感染拡大を機に普及した在宅勤務の定着に向けて、企業が制度の見直しに動き始めた。資生堂や富士通が業務の成果で評価する人事制度に本格的に移行する。在宅勤務に限定した社員の採用を始める企業も出てきた。在宅勤務の広がりで、出社して働いた時間を前提とする日本型の雇用制度が変わり始めた。
国内企業の多くは労働法制の制約もあり労働時間に応じて賃金を支払う仕組みが長く定着していた。しかし、会社でない場所で働く社員を時間で管理するのが難しく、労働基準法で定められた残業代支払いルールに抵触する恐れもあった。
こうした問題を解決するため、企業は職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を明示し、その達成度合いなどをみる「ジョブ型」雇用の導入を進めている。
資生堂は少なくとも約8000人のオフィス勤務の一般社員を対象に2021年1月から「ジョブ型」雇用に移行する。このほどオフィス出社人数を5割にする在宅勤務継続を決定。管理職では今年1月に導入済みの「ジョブ型」の対象を広げる。資生堂は「遠隔でも職務に基づく評価がしやすくなる」としている。(日本経済新聞 6月8日)

転勤の対象から外される代わりに昇進にも限度が設けられた地域限定社員は、ワークライフバランスに重点を置いた職制だが、テレワークの普及とともに「出勤社員」「在宅社員」という区分けが発生する。

勤務評価の対象はアウトプットに絞らざるをえなくなる。勤怠や理念の遵守など勤務態度に該当する要素は見えにくい。勤務時間のあり方も変わる。会社が各自のパソコンを常時モニタリングすれば把握できるが、監視体制は会社への不信感を発生させてしまう。

さらに自宅なら多少体調が悪くとも仕事に従事できるので、有給休暇制度にもメスが入るかもしれない。

在宅勤務の普及は商業施設にも影響をおよぼす。在宅社員がオンライン会議に出席する場所は自宅でも、デスクワークは喫茶店やファミリーレストラン、図書館などに場所を変えて、メリハリをつけるスタイルに向かうのではないか。

郊外の商店街や大型商業施設の客数が増える一方で、オフィス街の飲食店やコンビニエンスストアの客数は減ってゆく。商業施設の興亡に新たな動きが出てくるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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