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高プロ、導入は約10社どまり 開始1年も利用広がらず

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年収が高い専門職の人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を導入した企業が、昨年4月の制度開始から1年間で約10社、適用された働き手が414人にとどまることが厚生労働省の集計でわかった。「過労死を助長する」との批判が根強い中、安倍政権は経済界のニーズがあるなどと主張して導入したが、利用は広がっていないようだ。

企業が高プロを導入するには、働き手と会社の代表でつくる労使委員会で決議した上で、労働基準監督署に届け出る必要がある。厚労省の集計によると、今年3月末までの1年間に各地の労基署が受理した決議届は12件だった。同じ企業の届け出を複数カウントする場合もあるため、届け出たのは約10社とみられる。

高プロが適用できるのは年収1075万円以上で、金融商品の開発▽ディーリング▽アナリスト▽コンサルタント▽研究開発、の五つの対象業務に就く人。本人が同意する必要がある。適用された414人の業務別の内訳は、コンサルタントが369人と大半を占め、アナリスト27人、ディーリング15人が続いた。金融商品開発は2人、研究開発は1人だけだった。(朝日新聞デジタル 5月4日)

利用期間に定額を課金するサブスクリプションサービスが台頭しているが、同じ計算式を雇用に当てはめれば“定額働かせ放題”に行き着く。これほどコストパフォーマンスの高い賃金体系はない。

ひと昔前までは年俸制なら残業手当や休日出勤手当を支払わずにすむと誤解をして、長時間労働を強いる例が、とくにベンチャー企業に散見された。労働基準法を守っていたら会社は成長せず、まして株式上場は夢想に終わってしまうと。

高プロにも同様の事態を招きかねないリスクが潜んでいる。労使委員会で決議したうえで労働基準監督署に届け出たところで、普段の労働時間管理が十分でない限り、高プロは“ブラック制度”におちいりかねない。

高プロ対象社員は、成果を追い求めるために、ともすれば労働時間を度外視しかねない。雇用契約よりもフリーランス契約のほうが現実的かもしれない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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