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キヤノン御手洗会長が社長兼務 異例の3度目

ono20200511

キヤノンは1日、真栄田雅也社長兼最高執行責任者(COO、67)が同日付で辞任し、御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO、84)が社長を兼務する人事を発表した。真栄田氏から健康面で不安を抱えているとの申し出があり、同日開催の取締役会で決定した。御手洗氏の社長登板は異例の3度目となる。
新型コロナウイルスの影響で主力の事務機器やカメラの販売が落ち込む中、御手洗氏は事業環境が落ち着くまで社長を兼務して陣頭指揮に当たる。真栄田氏は非常勤の技術最高顧問に就く。
1995年から11年間社長を務めた御手洗氏は経団連会長に就任した2006年に会長に退いたが、12年3月に当時の社長が辞任。再登板後の16年3月に真栄田氏に譲った。既存の収益構造から脱し、医療機器など新規事業の育成が急がれる中、再び「ポスト御手洗」の育成が課題となる。
(時事通信 5月1日)

一般論としては、84歳になれば名誉職も含めすべての役職から退き、後進に道を譲って久しい時期だ。人生100年時代とはいえ、自分が第一線のポストに就けば、次の世代が詰まってしまう。
世代交代の節目では、自分の意欲よりも次の世代のチャンスを優先することが道理である。
だが、これは一般論である。キヤノンも一般論からの批判など百も承知で、御手洗冨士夫氏を社長に復帰させたのだろう。67歳の真栄田雅也氏の退任理由が健康不安なのに、新社長が84歳というのは違和感を禁じ得ないが、これも一般論に由来する違和感だ。

キヤノンに社長に適した人材が不在なのか、御手洗氏が余人をもって代えがたい経営者なのか。社内事情はともかく、経団連会長を務めた大物の元社長が社長に復帰するという象徴的な人事は、産業界に一定の影響をおよぼすのではないか。
高齢の元社長が復帰する例がつづくと、高齢者を鼓舞するだろうが、「老いては子に従え」の教えは風化してゆく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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