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博士人材の活用、政府、実効的な対策を

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若手研究者の支援や育成に向け、政府も遅まきながら対策に乗り出した。総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍晋三首相)は1月、博士課程に進学する大学院生への生活支援や企業による博士人材の積極採用などの目標を盛り込んだ総合対策を決めた。
課題は対策をいかに実効性のあるものにするかだ。政府には教訓とすべき過去の事例がある。1996年度に打ち出した「ポスドク1万人計画」では博士号取得の増加を目指し、大学院の定員を拡大した。だが、企業も含めて博士人材の受け皿は不足し、不安定な雇用に悩む多くのポスドクを生む結果となった。
足元では博士人材を積極的に採用したいという企業も増えつつある。
研究者の卵である博士は日本の将来を担う貴重な人材だ。政府は産業界や大学と密接に連携し、育てた人材を日本としてどう活用するのか、明確な道筋をつける必要がある。
(日本経済新聞 2月3日)

博士号取得者の多くは大学教授へのキャリアをめざしているが、じつに狭き門である。非常勤講師のまま年月を重ね、なかなか常勤職に就けず、低収入で苦労している人も多い。
40代前半の非常勤講師に事情を尋ねた。この非常勤講師は5つの私立大学で週に計11コマを担当しているが、講義数を詰め込んでも週12~14コマが限界だという。
年収は300万円台の後半。どの大学でも週2コマ単位で講義することが基本で、私立大学では1コマ当たりの報酬は月額2万5000円前後が相場。国公立の報酬はもっと下がるという。
ある私立大学の報酬規程を見せてもらった。講師の年齢によってランキングされ、30歳以下が1号俸で2万3300円、最高額は61歳以上が対象の6号俸で2万9800円。この非常勤講師は「ある程度の余裕をもって週8~9コマで済ませたくても、それでは生活ができないので、詰め込んでしまうのです。そのぶん研究活動の時間確保にしわ寄せがおよんでいます」と打ち明けた。
学歴と収入は正比例関係にあるというのが通説だが、そうではない現実も潜んでいる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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