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「転職で賃金増」コロナで減少 

新型コロナ禍の影響が転職市場にもおよんできた。民間調べによると、転職時に前職より賃金が増えた人の割合は7~9月期に26.6%と前年同期比2.7ポイント低下した。消費税率引き上げの影響などで景気が低迷していた2014年10~12月期以来の低水準だ。特にコロナの影響が大きい接客や販売などサービス業で大幅に悪化した。
リクルートキャリアが同社のサービスを使って転職した人のうち、賃金が1割以上増加した人のうち、賃金が1割以上増加した人の割合を集計した。賃金が上昇する転職者の減少は労働需給が緩んでいることを意味する。転職では通常面接から内定まで2~3カ月かかる。7~9月期の結果は、経済活動が制限された4~6月期の影響が出ている。
調査対象の5業種のうち4業種で賃金の上昇圧力が弱まった。下げ幅が最も大きかったのが「接客・販売・店長・コールセンター」で前年同期から11・9ポイント下がった。サービス業はコロナの影響が直撃し、積極的に働き手を確保したい企業が減った。オンライン面接が他業種よりも少なく、春先に採用活動が滞った影響もあったようだ。
(日本経済新聞 11月3日)

厚生労働省が11月6日に発表した毎月勤労統計調査によると、9月の実質賃金は前年比1.1%減。7カ月連続で低下したが、要因はコロナ禍で前年比12.5%減と大幅に減少したことだ。コロナ禍で賃金水準が低下したことが改めて確認された。
バブル崩壊やリーマンショックの後も同様だったが、コロナ禍でも転職で収入がアップするケースは少ないようだ。そもそも不況期に転職を考える人も収入アップよりも、勤務先への不安やワークスタイルの変更を考えている。
エン・ジャパンが自社で運営する転職サイト「ミドルの転職」の35歳以上の利用者を対象に実施した調査(回答2822人)で、次の4点がわかった。
・コロナ禍前後で転職理由に「変化がある」と16%が回答し、「企業の柔軟な働き方への理解や対応」「企業の経営状態」への関心が高まる。
・18%が「コロナ禍以後に転職を考え始めた」と回答。
・転職を考えた理由の第1位は「会社の将来に不安がある」。コロナ禍以後に転職を考えた回答者
のうち、理由を「会社都合」と回答した割合は、コロナ禍以前に転職を考えた回答者の2倍超。
・今後、転職をした際に実現したいことは「経験・能力が活かせるポジションへの転職」。
転職には吉凶が付きものである。不況期の優先事項はリスク回避だ。転職せずに済むのなら、それに越したことはない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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