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老後「働いて生活」48% 19年は年金不安で最高に

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金融広報中央委員会(事務局・日銀)は18日、2019年の「家計の金融行動に関する世論調査」を公表した。老後の生活資金を「就業による収入」で稼ぐと答えた世帯は48.2%にのぼり、現在の調査方式となった07年以降で最高となった。年金だけに頼ることへの不安や、高齢者の働く意欲の向上が背景にあるようだ。

老後の生活資金源(3つまでの複数回答)に関する質問では、調査を始めて以来、一貫して約8割の世帯が「公的年金」をあげている。年金が主な資金源であることは変わらない一方で、就業収入をあげた世帯は07年の38.3%から徐々に増えてきた。

第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「社会通念が変化し、働き手、雇い手ともに高齢者が働くことは当然だと考えている。19年は老後2000万円問題もあり、将来不安が高まったのも影響したのではないか」という。

2人以上の世帯が保有する、日常生活のための預貯金を除いた金融資産の平均は1139万円で前年比35万円減った。収入は増えた一方、有価証券などの評価額が減った。調査は6月14日~7月23日に全国8000の2人以上の世帯を対象に実施し、3222世帯から回答を得た。(日本経済新聞 11月18日)

政府が打ち出した人生100年時代がそのとおりになれば、老後が延長され、貯金が底を突いてしまう高齢者も続出するはずだ。医療機関の受診抑制も頻発するだろう。

さる11月20日に開かれた中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の総会で、生活習慣病の治療には継続的な受診がポイントなのに、経済的な理由で中断してしまう患者が多いと指摘された。

経済格差が健康格差に直結することはすでに実証されているが、老後の延長によって、さらに格差が顕著になってゆく。いくら政府が健康寿命の延伸を喧伝したところで、医療費を確保できなければどうにもならない。

長生きが長寿とは限らなくなり、“長忌”になるかもしれない。その不安に向き合うには、多くの場合、働きつづける以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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