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民間人材 兼業・副業で自治体へ

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全国の自治体で企業の社員ら民間人材を兼業や副業の職員として獲得する動きが広がっている。観光振興やIT(情報技術)などの施策に民間の手法や発想を生かす。都市部の専門人材を転職よりもハードルが低い兼業で地方に招き、行政課題の解決や職員の意識改革につなげる。情報流出などの懸念もある民間同士に比べて企業側の協力も得やすいと見込む。

長野市では10月上旬、東京都内の男女計4人が音楽会社などに属しつつ「戦略マネージャー」として働き始めた。人口減少が加速する2040年ごろに向けた市の長期ビジョン策定に起用したいと、兼業・副業を前提に募集した。

5月から3人程度を募集し、626人が応募した。4人はマーケティングなどの経験を持つ。「長野市について真剣に考えてくれた点を評価した」(市企画課)。月4回ほど働いてもらい、1日2万5千円と交通費を支給する。(日本経済新聞 11月6日)

エン・ジャパン社長の鈴木孝二氏は11月4日付け日本経済新聞に掲載されたインタビュー記事でこう語っている。

「自治体の意識が急速に変化していると感じる。プロパーの職員だけでは様々な行政課題に対応できず、即戦力となる人材を外から迎え入れる動きが広がっている。私たちが手伝った例では、奈良県生駒市が市長の肝煎りで『首都圏でのPR』『ICT推進』など7つの部長級ポストを公募し、2000人もの応募があった。一部の職種はテレワークでもよく、それも人気の理由だったようだ」

民間人材と公務員との違いは、大まかにみれば収益創出と予算消化の違いである。業績評価によって降格や減給がごく普通に実施されることも、民間と行政の違いだが、公務員は民間人材よりも劣るという評価は的外れだ。

そもそも民間と行政は業務の意思決定プロセスが違う。民間人から見ると公務員の仕事の仕方は杓子定規だが、公務員は制度の枠内で仕事をするので、がんじがらめなのである。意思決定に議会の承認が必要な業務も多く、不条理な力関係にも影響されやすい。

それにもかかわらず、生駒市が募集した7つの部長級ポストに2000人もの応募かあったというのは、どんな背景からなのか。市場原理や競争原理からの逃走ではなく、社会起業家の活躍に啓発され、公益の追求を志す人が増えているのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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