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何をしたらパワハラ?厚労省、防止策義務化に向け指針案

ono20191030

職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止策が来春にも企業に義務づけられるのを前に、厚生労働省は21日、パワハラ行為の定義とその具体例などを盛り込んだ指針の素案を労働政策審議会の分科会に示した。
5月に成立した改正労働施策総合推進法は、パワハラを(1)優越的な関係を背景にした言動で、(2)業務上必要な範囲を超えたもので、(3)労働者の就業環境が害されることと定義。
パワハラを「行ってはならない」と明記する一方、罰則を伴う禁止規定は見送った。

指針の素案では、(1)~(3)の要素をすべて満たすものがパワハラだとした。企業に防止策を義務づける労働者は、正社員のほか、パートタイムや契約社員など非正規雇用者も含むとした。一方、企業と雇用関係にないフリーランスや個人事業主、インターンなどは対象外とし、「必要な注意を払うよう配慮」を企業に求めるにとどめた。
素案はまた、厚労省が示している6類型に沿ってパワハラに当たる具体例を列挙した。例えば「精神的な攻撃」では、業務に関する必要以上に長時間の厳しい叱責(しっせき)の繰り返しはパワハラに当たるとする一方、業務内容に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して強く注意することは、パワハラに当たらない、などとした。
(朝日新聞デジタル 10月22日)

学校も会社も自治権の確立した治外法権の空間であるかのような空気に支配されている。
だから刑事事件が「パワハラ」や「いじめ」に矮小化され、勤務先の職場は組織防衛を目的に司法当局から距離を置き、道徳問題として幕引きを図ろうという流れに入るのだ。
厚生労働省が示したパワハラの6類型も、違法性のある行為には抵触する法律を明示して、それぞれが犯罪行為であることを明記したほうがよい。これをベースに企業は社内向けに犯罪防止規定集を作成し、社員に輪読させ、周知徹底を図る。

一方、文部科学省も学校向けに同様のガイドラインを作成し、各学校が全校に周知徹底させる。
それでも犯罪はなくならないから、あとは捜査当局に委ねる以外にない。
パワハラでなく「部下に対する犯罪」、いじめでなく「同級生に対する犯罪」という認識を植え付けない限り、この問題は繰り返される。
 

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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