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未払い賃金の請求期間 まず3年に延長へ

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厚生労働省は働き手が企業に未払い賃金を請求できる期間について、現行の2年を3年に延長する検討に入った。2020年4月の改正民法施行で賃金に関する債権の消滅時効が原則5年となるのに対応する。労働者の権利を守るため将来は5年への延長を視野に入れつつ、企業経営の負担が過大にならないよう、まずは3年への延長で制度改正の実現をめざす。
労使の代表らで構成する労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で19年度中にも結論をまとめ、早期に労働基準法改正案を国会に提出したい考え。
労基法は労働者が過去2年にさかのぼり未払い賃金を請求できるとしている。だが改正民放では賃金に関する債権の消滅時効を1年から原則5年に延長する。この結果、労働者保護のため優先して適用される労基法の請求期間が民法より短くなる「ねじれ」が生じる。
(日本経済新聞 10月21日)

未払い賃金の支払いを渋る企業の心理は、ともかく払いたくないのだ。社員への債務であることを説かれても、返済ではなく贈呈としか思えず、損をすると妄想してしまう。

10年近く前の出来事だが、あるコンサルティング会社が、労働基準監督署から残業手当の未払い分の支払いを行政指導された。全社員の過去2年分である。全員に支払われたが、本来の金額の半分にも満たなかったという。

払いたくないのに支払を命じられたから、とりあえず半額を支払った。それが真相だろう。
ただ、企業の資金繰り状態によっては、未払い分の支払いにあてる原資が枯渇している場合もある。払いたくとも払えないのだ。

そんな企業では、経営危機を察知した社員は未払い分の請求に固執せず、さっさと辞めて次の職場に移ってゆく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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