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「除染作業で被ばく」=技能実習生、会社を提訴-福島地裁支部

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鉄筋施工技術の習得目的で来日したのに、東京電力福島第1原発事故の除染作業に従事させられ被ばくしたとして、ベトナム人技能実習生3人が4日までに、実習先の会社に計約1200万円の損害賠償を求める訴訟を福島地裁郡山支部に起こした。3人を支援する労働組合が同日、東京都内で記者会見して明らかにした。

訴状によると、訴えられたのは福島県郡山市の建設会社「日和田」。3人は2015年7月に来日し、実習中だった16年3月からの約2年間、同市などで除染作業を行ったほか、当時は避難指示解除準備区域で立ち入り禁止だった同県浪江町で下水道配管工事に従事した。

3人の除染作業などは計約300~420日間に及んだが、放射線被ばくの危険性などについて、労働安全衛生法に基づく十分な教育を受けていなかった。会社側は3人に除染作業を行わせたことを認めているという。

原告のグェン・バ・コンさん(36)は代理人弁護士を通じ、「除染をたくさんやらされました。危険な仕事だとは知らされませんでした。将来、とても健康が心配です」と訴えた。会社側は「担当者が不在でコメントできない」としている。(時事通信 9月4日)

外国人技能実習生の就労環境は改善に向かうのだろうか。ある大使関係者からこんな事例を聞いた。

その大使館は多くの実習生たちからの相談を受けているが、そのなかに介護技能実習生がいる。実習先の介護施設から実習1カ月後に「モンゴルに帰れ」といわれたという。事情を聞くと、施設で高齢者をマッサージしたところ、力が強すぎて身体に痣ができたといわれ、辞めさせられたのだ。本人は「そんなことはしていない」と主張するので、大使館が介護施設に確認したら「私たちには責任がない」と。

監理団体に確認したら「うちには関係ない」と回答されたという。

あるいは、食品関連事業所で実習する予定で来日した実習生が監理団体に連れていかれたのは介護施設だったという相談もあった。

こうした実態はSNSなどで母国にもあっという間に知れわたっている。東京オリンピックを控え、日本社会の接遇水準は「おもてなし」とアピールされているが、労働現場には対極の実態にある例も多い。

外国人労働者に支えられた社会を現わす目標概念に「多文化共生社会」があるが、実態を見聞する限り空念仏に聞こえなくもない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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