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急増する「日本語学校」進むブラック化…契約書なし、低い給与に泣く講師たち

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外国人留学生のための日本語学校が急増している。8月22日の法務省告示による新規開設は29校で合計775校となった。10年ほど前に比べて、2倍近い学校数だ。法務省は年ごとの新規開設数を公表していないが、官報を遡って計算すると今年はすでに70校増えた計算。

急増する日本語学校では経営者による不法就労の援助などの犯罪や、劣悪な労働環境など、法人としての粗さが目立つ。日本語学校での勤務経験もある筆者が、その実態を伝える。

日本語学校は在留資格「留学」が付与される留学生を受け入れ可能な日本語教育機関であり、法務省入国管理局が定めた告示基準を満たした機関を指す。その基準は詳細に規定されているが、設置者の国籍、法人の形態は問われず学校の設置という基準で考えればかなり緩い。

日本語学校が急増したのは2008年、福田内閣が留学生を当時の14万人から12年後の2020年に30万人に増やすプランを策定したのが原因。

大学等に進学する場合、最初の受け入れ先である日本語学校で学ぶ必要がある。留学生を増やそうとしても日本語学校が少なければボトルネックになってしまう。目標達成には間口を広げるしかなく、その結果、雨後の筍のように日本語学校が増殖したのである。(弁護士ドットコム 9月3日)

この記事はジャーナリスト松田隆氏のレポートで、すぐれた問題提起である。

日本語教員には資格要件がある。①日本語教育能力検定試験合格者②4年制大学卒業で420時間の日本語教師養成講座受講修了者③4年制大学の日本語教育専攻卒業者。この3つのどれかに該当すれば資格を取得でき、教員としてのキャリアは非常勤講師からスタートして、告示校で3~4年のキャリアを積んでから常勤講師に昇格するのが通例である。

つまり非正規労働者からスタートするのだが、新卒であれ、他業界からの転身であれ、この売り手市場の時代に、当初から非正規雇用を選ぶ人がどれだけいるのか。給与水準の高い職業なら非正規のリスクも覚悟できるだろうが、日本語教員は薄給である。

年収ポータルサイト「平均年収.JP」によると、非常勤日本語教員の年収は180~200万円前後で、常勤教員は300~350万円に過ぎない。

ある日本語教育機関関係者はこう説明する。

「この給与水準では、男性が妻子を抱えて住宅ローンも支払うというような生活設計は不可能に近い。だから日本語教員の多くが女性である。しかも学生が欠席したら電話をかけて様子を確認したり、欠席が続くとアパートまで出向いたりすることもある。国際貢献への情熱を持っていないと務まらない仕事で、教員たちは情熱に支えられて働いているようなものだ」

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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