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リクナビ問題、20社超が自主的に購入を公表 リクルートの対応「危機意識足りず」

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就職情報サイト「リクナビ」が就職活動中の学生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売していた問題で、トヨタ自動車やりそなホールディングス(HD)といった20社超が、25日までに購入していたことを明らかにした。「就活のプラットフォーム」となっている同サイトを運営するリクルートキャリア(東京)が、個人情報の扱いをおろそかにしたうえ、再発防止策も示さず、問題は長期化。企業による「データ利活用」の歩みを鈍らせる可能性もある。

問題となったデータは、学生のサイト閲覧履歴などを基に、内定を辞退する確率を5段階で算出するもの。採用担当者が苦労して選考して内定者を決めたのに、辞退者がでれば採用計画が狂うという“悩み”の解消につなげることができる。特に人手不足で、学生の売り手市場にある中、企業の需要は大きい。

だが、リクルートキャリアは、サービス提供で学生本人の同意を一部で得ていなかった。問題の表面化を受け、8月5日にサービス停止を発表。38社が購入したことは明らかにしたが顧客である購入会社の社名は非開示としたままだ。
 
このため、購入企業が自主的に購入事実を公表する異例の事態となっている。(産経新聞 8月25日)

政府の個人情報保護委員会は8月26日、リクルートキャリアに是正勧告と指導を行なった。なぜ同社は危ういビジネスにおよんだのか。

日本経済新聞(8月24日付)は、内定辞退率データ販売について、元リクルートキャリア社員の証言を掲載している。

「『倫理的に問題があるのではないか』と反対するエンジニアもいたが、収益拡大という結果を出したい営業担当に押し切られたようだ」

1988年に発覚したリクルートコスモス社の未公開株譲渡に起因するリクルート事件をめぐって、リクルートは“利狂人”と揶揄された。当時を知る社員の一部は、いまは経営幹部に昇進しているのだろうが、30歳前後で退職する社員が多い会社なので、学習効果が組織に刷り込まれていないのかもしれない。

データ購入を公表した企業はどこも合否判定にデータを使用していないと述べているそうだが、「合否判定に使用した」と答えるはずがない。ヤフーには「元会社経営者」が、こんな書き込みをしている。

「こういう情報は、決して安い情報ではありません。購入した会社が『合否の判断に使用していない』という回答は、まず間違いなく後付けの言い訳です。高い情報料を払って使わなければ、ただの無駄遣いです。決済の降りたものに対して使わなければ、購入案申請した人達は役員から叱責されるので、確実に使います」

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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