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転職で賃金増 最大で37%に

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厚生労働省が21日に発表した2018年の雇用動向調査によると、転職に伴って賃金が増加した人の割合が前年に比べ0.6ポイント高い37.0%となり、比較可能な04年以降で最高水準となった。転職後に賃金が1割以上増えた人は25.7%となった。人手不足を背景に、企業が賃金を引き上げて必要な人材を確保する動きが強まった。転職しても賃金が上がりづらい状況から、労働需給を反映する市場に変わる兆しが出ている。

18年1月1日時点の労働者の総数は前年から27万人増え4970万人となった。転職して現在の仕事に就いた人は495万5000人で、全体の10%を占めた。

年代別では、20~24歳(48.6%)が最も賃金が増加した割合が高く、19歳以下(48.5%)が続いた。ただ35~39歳でも39.5%、40~44歳でも41.4%を占め、一般的に転職の限界とされる35歳を超えても好条件で転職する人が増えている。

一方、転職で賃金が下がった人も前年から1.2ポイント増の34.2%となった。特に50歳以上で賃金が下がっている割合が高く「定年を迎えて転職する高齢者が増えていることが影響している」(厚労省)という。(日本経済新聞 8月22日)

ひと昔前までスカウトされた場合をのぞけば、転職は賃金ダウンが通例だった。転職を踏みとどまる理由にも、賃金ダウンによる生活設計の修正難が多かった。買い手市場がつづいていた時代には、採用側にも、求職者の足元を見透かして買い叩くような傾向も見受けられた。

転職先も大手企業から中堅企業へ、中堅企業から中小ベンチャー企業へ、というように格落ちと見なされる例が多く、転職にはドロップアウトのイメージも付いて回った。

だが、たとえば高偏差値の大学生が新卒でベンチャー企業に就職することは珍しくなくなり、企業規模で格付けされる風潮も低下した。たび重なる上場企業の経営破綻や不祥事で株式上場も信用の証しとはいえなくなり、有能な人材にとって、企業規模の大小や上場・未上場などの転職先選びの有力な基準ではなくなった。

さらに人手不足を背景に、賃金アップを条件に中途採用を行う企業が急増した。若手のIT人材だけでなく、40歳を超えていても転職して賃金がアップするケースが多くなった。終身雇用の終焉も拍車をかけて、転職はステップアップの手段に定着したのである。

転職による賃金アップはしばらくの間つづくだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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