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看護師目指す外国人、落ちても「特定技能」へ 政府検討

20190822

介護の人材不足を解消するため、政府は経済連携協定(EPA)で来日した外国人が目指す試験に落ちても帰国せず、在留資格「特定技能」に移行して介護現場で働けるようにする取り組みを進めている。すでに介護福祉士の候補者は移行できるようにしたほか、看護師の候補者も移行対象にすることを検討している。
厚生労働省によると、介護人材は2025年度に約34万人不足する見込み。4月に導入した新しい在留資格「特定技能」では、介護分野は5年間で6万人の受け入れを見込むが、不足解消のめどは立っていない。
一方、EPAに基づく在留資格は、介護や看護の現場で働きながら、介護福祉士や看護師の資格取得をめざすものだ。合格すれば在留資格を上限なく更新できるが、不合格なら介護福祉士候補者は最長5年、看護師候補者は最長4年で帰国しなければならない。
制度が始まった08年度以降、介護福祉士の候補者はインドネシア、フィリピン、ベトナムから18年度までに約4300人が来日。計1724人が試験を受けたが、約4割にあたる739人が不合格だった。政府は5月、得点が合格点の5割以上などの条件を満たした人が希望すれば、日本語試験などを経ずに「特定技能1号」に移行できるように運用要項を改正。特定技能1号は最長5年働けるため、あわせて最長10年働けるようにした。
(朝日新聞デジタル 8月11日)

介護人材確に向けた窮余の策とはいえ、看護師試験と介護福祉士試験の不合格者を特定技能「介護」に移行させる措置は合理的である。せっかく日本で実務を学んだのに、不合格を理由に帰国しなければならない制度は、いかにもモッタイナイ。
本人が引き続き日本での就労を望むのなら移行措置は合理的である。たとえ介護福祉士試験に合格しなくとも、EPA人材はおしなべて優秀だから、介護業界にとってもありがたい措置だろう。

だが、看護師候補生から特定技能への移行措置は、日本政府が介護職は看護職よりも下位職種と認定したようなものだ。たしかに介護施設での力関係は、看護職のほうが介護職よりも上で、給与も看護職のほうが高いが、序列の上下関係でみるべきではない。

経営状態が良好な施設では看護職と介護職のコミュニケーションが円滑で、看護職が介護職から学ぶことも多いという。「看護職には届かないなら介護職で」という制度設計は、職種間の序列をあからさまに示しているようで、介護職の地位向上にはマイナスだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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