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<働き方改革の死角>「副業の労働時間 合算せず」 企業の管理義務廃止案

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厚生労働省は、副業・兼業を推進するため、これまで「複数職場の労働時間は通算する」としてきた労働基準法の規定を削除する案を盛り込んだ報告書をまとめた。これが実現すると、本業と副業を合わせて過労死ラインを超える長時間労働をさせることも可能になり、働き方改革関連法により四月から定めた残業の上限規制が骨抜きになるおそれがある。今後、労使の代表らで構成する労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論するが、労働側の反発は必至だ。

二十五日に開く専門家会合で報告書を決定する。

政府は二〇一七年三月にまとめた働き方改革実行計画で、柔軟な働き方を促進させるとして「副業・兼業の推進」を打ち出した。厚労省も一八年一月に企業の就業規則の事実上のガイドラインとなってきたモデル就業規則を改定。副業・兼業の解禁にかじを切った。

だが「副業先を含めた労働時間の管理が大変」とする企業が多く、解禁企業は増えていない。このため、規制改革推進会議は本業と副業先を通算して労務時間を把握し、管理するよう義務付けた労働基準法の規定(三八条)を見直すよう答申。厚労省は検討を続けてきた。

労働時間を通算しないとなると、現行法では違法な長時間労働も合法となってしまう懸念がある。(東京新聞 7月25日)

副業の労働時間まで合算して労働時間を管理することは、会社にとって至難のはずだ。副業は自社の管理下で行なわれるのはないのだから、会社には労働時間管理の責任をもちようがない。

たとえば本業と副業の合算時間が過労死水準に近づきそうなら、副業を減らせばよいだけだ。自己責任の問題である。本業と副業の合算時間を調整できるのは本人だけで、本業先にも副業先にも、管理を求めることは筋違いだろう。

副業は本人とって自営業である。副業先との関係は業務委託関係であり、雇用関係ではない。だから、労働時間に関する会社の監督義務は本業のみに限定してよい。

政府が打ち出した副業の推進は“自営業との兼業の推進”でもある。自由で柔軟な働き方に自己責任がともなうのは当然である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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