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「腐ったミカン置けない」 追手門学院、外部講師が発言

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大阪府内で大学などを運営する学校法人追手門学院が2016年に開いた職員研修で、外部の講師が「腐ったミカンは置いておけない」などの厳しい言葉を各受講者にかけていたことがわかった。学院側は、研修中やその後、受講者に退職を勧めており、翌年度にかけて少なくとも数人が退職したり休職したりした。

複数の受講者の証言などによると、学院は16年8月22~26日、追手門学院大学(大阪府茨木市)などの事務職員18人を大阪市内のビルに集め、「自律的キャリア形成研修」を開催。講師は東京都内のコンサルタント会社が担い、学院幹部らが入れ替わり立ち会った。

研修の中で学院側は、内容を講師と事前に精査し、「全権委任している」と説明。講師は「自己改革」などをテーマに1人ずつ、受講者全員の前で発表させ、その場で講評した。

その際、受講者の一人に「腐ったミカンを置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」と発言。ほかの受講者にもそれぞれ「あなたが一番、参加する意欲、姿勢が曇っている。よどんでいる」「負のオーラばっかりだ」「あなたは要らない」などと言った。

研修で講師は、受講者を選んだ理由について「28歳以上59歳未満」「前年度評価で降格」など5条件のどれか複数に該当すると説明。(1)退職(2)年俸制など(3)関連会社への出向転籍(4)関連会社への転籍後に退職(5)再生・現状維持、の選択肢から選ぶよう求めた。(朝日新聞デジタル 6月23日)

昔は自己啓発を狙った社員教育に起用された外部講師には、否定から入って気持ちを凹ませて、持論に誘導するという手法を取る例が多かった。研修終了後は、人によっては高揚感から就労意欲を高め、それが1カ月近く持続することもあるが、ほどなく冷めてしまう。

化けの皮がはがれやすい手法だった。

この外部講師は「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則を得意げに振りかざしたのだろうか。さまざまな社員教育セミナー取材の場で、何度も見てきたので容易に想像がつく。

取材したセミナー講師には、他人を詰めることに酔い痴れ、借り物の人生訓を自説のように話し、カリスマ性を演出したがる人物が多かった。(先生稼業も大変だな)と同情したくなることもあったが、底の浅さは否めなかった。

追手門学院大学は川原俊明理事長名で「外部講師の発言に受講者への配慮が足りなかったことを重く受け止めます。本学院は、ハラスメントに対してより敏感に対処してまいります。このことを踏まえ、学院では関係者の責任と処分について検討中です」と声明を発表した。暴言を吐いた外部講師にも責任を問うのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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