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未払い賃金の請求期間、延長へ さかのぼり「原則5年」

ono20190624

残業代などの未払いがあった場合、社員が会社に請求できるのは「過去2年分」までとする労働基準法の規定について、厚生労働省の有識者検討会が13日、期間の延長を促す見解をまとめた。2020年4月施行の改正民法で、さかのぼってお金を請求できる期間を「原則5年」にすることを踏まえた。
1896年制定の民法は、さかのぼってお金を請求できる期間を原則「10年」とし、賃金の請求に限っては「1年」としていた。それでは働き手に不利だとして、1947年制定の労基法で未払い賃金を請求できる権利が消滅する時効を「2年」とする特例がつくられた。

これに基づき、違法残業が発覚した企業は、実際の違法期間がより長い場合でも、2年分を上限に未払い残業代を払うことが多い。
だが、改正民法でお金を請求できる期間が原則5年とされ、このままでは労基法の特例期間が民法の規定よりも短くなってしまうため、厚労省の検討会で議論していた。
検討会では「労働者を守るための労基法の規定が、民法の規定を下回ることは認められない」といった意見が大勢を占め、見解では「2年のままとする合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で見直しが必要」と結論づけた。
(朝日新聞デジタル 6月14日)

この問題について日本経済新聞(6月14日付け)は「現行の2年から最長5年に延ばすことを検討していたが、経営側が反対、当初の取りまとめの予定から1年近くたっても具体的な延長期間で結論が出ないままだ」と書き、さらに「労政審に議論の場が移っても、労使間の隔たりが詰まるかどうかは見通せないままだ」と展開した。

議論を企業寄りに導こうとしているのかどうかは知る由もないが、未払い賃金の不払いは債務不履行である。資金繰りが悪化して払えないのか、それとも払いたくないのか。企業側がどう繕ったところで、未払いの被害を受けた社員は見抜いているものだ。

労働を仕入れて、消費して、対価を支払わないのは詐欺に等しい。労使問題の大半では労働者が弱者である。まして賃金未払いでは、無い袖は振れないと開き直る企業も多い。雇われている立場では、保全措置を打ちようがない。
労働者側の泣き寝入りを回避できる法整備が急務である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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