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日本の管理職 短命? 東大など比較、欧州と傾向異なる

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日本の管理職や専門職の男性は他の労働者に比べ死亡率が高く、管理職の方が健康な欧州とは異なった傾向の健康格差があることが、東京大などが13日までに行った国際比較で分かった。死亡率はバブル崩壊後の1990年代後半に上昇。現場の仕事と組織運営を兼ねる「プレーイングマネジャー」化や組織縮小で心身の負担が増した影響を引きずっているとみられる。

2000年代以降は低下傾向にあるが、一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」ができるなど逆行する動きも。東大の小林廉毅教授(公衆衛生学)は、時間の自己管理が建前の管理職は、自らを長時間労働に追い込みがちだと指摘。「働き方改革を進め、健康状態の悪い人の状況を把握できる統計の整備が必要だ」と話した。

(中略)

欧州は90年代から一貫して、経営者や中間管理職、医療職や教員らの「管理職と専門職」より「事務・サービス系」「工場や運輸など肉体労働系」の死亡率が高かった。(日本経済新聞 6月14日)

この記事で紹介された調査結果と類似した結果を昨年10月に一般社団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構が発表している。

日本では1995年頃から、30~59歳男性の職種別死亡率が、専門職と管理職が増え始めてブルーカラーと逆転し、ブルーカラーは減り始めているという。社会経済的地位(SES)の高い人ほど不健康になる可能性を示唆する要因としてはストレスが有力であるというのが、担当研究者の見解である。

その根拠として①高いSESの女性は乳ガンになりやすいが、ストレスが原因となっている可能性がある②ホルモン検査で客観的にストレスレベルを把握したところ、職位と正相関した②高い職位に伴う人間関係の悪化が、職位と健康の関係を媒介している――などが示された。

厚生労働省が2005年に50~60歳だった人を対象に実施した「中高年縦断調査」でも、同様の傾向が表れている。以下の傾向が認められたという。

・学歴が高い人ほど同じ会社に20年以上勤続して中高年を迎えている。
・勤続20年以上の男性は他の男性社員よりも糖尿病と高脂血症の罹患率が高い。
・勤続20年以上の女性は他の女性社員よりもがんや糖尿病の罹患率が高い。
・同じ会社に20年以上勤務していると、年功賃金を反映して所得と貯蓄を大きく高める。
・職場の人間関係に不満足だった人ほど糖尿病などの疾患を持っている。

こうした調査から、担当研究者は「暫定的な結論」として長時間労働を原因に指摘した。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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