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企業にパワハラ防止を義務化へ、違反なら社名公表も

pawahara

職場でのパワーハラスメント(パワハラ)を防ぐため、企業に防止策を義務づける労働施策総合推進法の改正案が、29日の参院本会議で可決、成立した。義務化の時期は早ければ大企業が2020年4月、中小企業が22年4月の見通しだ。
改正法は、パワハラを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義。その上で、パワハラ防止策をとることを企業に義務づける。従わない企業には、厚生労働省が改善を求める。それにも応じなければ、厚労省が企業名を公表する場合もある。

企業が取り組む防止策の内容は、これからつくる指針にまとめる。加害者の懲戒規定の策定▽相談窓口の設置▽社内調査体制の整備▽当事者のプライバシー保護などが想定され、今夏にも始まる労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で議論して決定する。
パワハラ対策の法制化をめぐる議論では、「パワハラ」と「業務上の指導」の線引きが難しいとの指摘があった。このため指針では、パワハラに当たる「アウト」の例や、指導といえる「セーフ」の例も示す。判断基準をわかりやすく示し、企業の取り組みを後押しするねらいがある。(朝日新聞デジタル 5月29日)

パワハラを告発されば、加害者は「指導が行き過ぎただけだ」と釈明して、パワハラ認定に抵抗を示すものだ。告発を受けた社内の相談窓口担当者も、できることなら見解の相違でウヤムヤにしたいのが本心だ。優先したいのは事実関係の解明よりも幕引きである。

パワハラの撲滅は現実的に不可能だが、低減を図るには罰則規定が必須要件だが、指導との線引きが難しいという理由で罰則規定は見送られる見通しだ。本当に線引きが難しいのか。事実関係を精査すれば白黒の決着をつけやすいはずである。
セクハラに対してパワハラには容認する余地が残されたままである。黒に認定された場合、セクハラなら左遷されてもパワハラなら厳重注意ですまされる例が少なくない罰則規定がなければ、厚生労働省が改善に従わない企業名を公表したところで、どこまで実効性を期待できるだろうか。

厚労省はパワハラの類型を①身体的な攻撃②精神的な攻撃③人間関係からの切り離し④過大な要求⑤過少な要求⑥個の侵害―の6つに整理した。このうち身体的な攻撃はパワハラでなく暴力であり、暴行事件として処置しないと再発防止には至らない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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