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看護職員の2割がセクハラ経験 8割が「辞めたい」

自治体病院の看護職員の4割がパワハラを、2割がセクハラを受けた経験があるとする調査結果を、自治労連が13日、公表した。8割以上がサービス残業をし、4人に1人は有給休暇の取得が5日未満だった。過酷な看護職員の職場環境の改善が進んでいない実態が浮かび上がった。
調査は自治労連が2018年9~10月に23都道府県の97病院で働く職員を対象に実施し、9584人が回答した。パワハラを受けた経験があるのは43%で前回の14年調査から4ポイント増えた。上司から受けたが最多で56%。次いで医師32%、同僚13%が続いた。患者、患者の家族は合わせて14%だった(複数回答)。
セクハラを受けた経験があるのは21%で前回と同じだった。患者から受けたのが60%で最も多く、医師の28%が続いた。
労働時間や休暇について聞いたところ、18年9月の実績ではサービス残業をしていた人が80%を占めた。7%は20時間を超えていた。また、17年の有給休暇取得が5日未満だったのは25%だった。また、41%が3日以上の連続休日がなかったと答えた。
7割以上が仕事にやりがいを感じていると答えた一方、「十分な看護が提供できている」としたのは15%にとどまった。8割近くが「仕事を辞めたい」と答え、最も多い理由は「人員不足で仕事がきつい」だった。
(朝日新聞デジタル 5月13日)

この記事に関するネットへの書き込みを見ると、現役看護師と思える書き込みが相当多く、書き込みによるとパワハラの加害者には医師が多い。資格社会である病院では医師を頂点とするヒエラルキーが形成されていて、ヒエラルキーの最下層にランクされるのは事務職である。

かつて民間病院では、院長夫人が事務長を含め事務職を「使用人」と呼ぶ慣わしがあった。いまでも地方に行くと、高齢の病院長夫人のなかには、相変わらず「使用人」と呼ぶ人がいるそうだ。慣例としてビジネスライクに呼んでいるのではなく、本当に「使用人」と思っているのだろう。
病院経営は、事務長の手腕によって診療報酬請求や医薬品・医療材料のコスト管理の精度に差異が出て、収支が大きく左右される。それだけの要職なのだが、院内で無資格者は格下に扱われがちである。

看護師へのパワハラも、病院がヒエラルキー組織であることが背景になっていることは容易に想像がつく。院内の懲罰規定も、たぶんパワハラとセクハラには無力に近いのではないか。看護師の地位向上に取り組んできた日本看護協会に、パワハラとセクハラの撲滅に尽力してもらう以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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