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苦戦の中小採用、「社長の魅力」で勝負 インターンで成長環境「見える化」も

2020年卒大学生の就職活動は学生優位の売り手市場で進み、知名度が低い中小企業にとって厳しい採用環境が続く。会社説明会を開いても学生は集まらず、内定を出しても辞退され、人手不足は中途採用で補うしかないと諦めムードも漂う。こうした中、一緒に働きたいと思われる社長の人柄で魅了するよう促したり、長期インターンシップ(就業体験)で会社の面白さを喚起したりして奮起を促す人材コンサルティング企業が現れた。成長機会を求める学生にアピールする作戦だ。
「意志の強さや情熱で会社を引っ張る社長はチャーミング。知名度の高い大企業を目指しがちだが、社長の魅力で選ぶのもありかなと思った」
4月10日、東京・虎ノ門で「この社長と働きたい」というチャーミングな社長ナンバーワンを学生が決めるコンテストが開かれ、学生審査委員を代表して田代葵さんがこう論評し、今の学生が求める一つの会社像を示した。ポイントは成長機会を積極的に提供してくれる職場環境であり、それを牽引(けんいん)する社長の器だ。
こうした魅力の持ち主と認められた5人のファイナリストがこの日、集まった約650人の学生・社長の前でプレゼン。最もチャーミングな社長に選ばれたサラダボウル(山梨県中央市)の田中進代表取締役は「(審査委員から名付けられたキャッチコピー)『農業界のファーストペンギン』らしく、仲間と新しい時代を切り開いていく。農業の新しいカタチに挑戦しており、若い人には失敗できるチャンスを与え成長を促したい」とあいさつ。集まった学生に一緒に働こうと呼びかけた。
(SankeiBiz 5月6日)

起業してイッパシの企業に成長させる社長は、社員と取引先を率いていけるだけの何かしら人間的な魅力をもっているものだ。そうでなければ、とくに処遇が不十分なスタートアップ期の企業では、社員は入っては辞めての繰り返しで、いっこうに組織力が強化されない。

魅力とは、この場合、説得力である。だから社長が採用説明会に出席するかどうかは、採用の成果に大きく影響するが、目端の利く学生は経営者の周囲を固める役員と幹部社員も注視している。上司や先輩として範になりうる人物かどうか。

社長がパワフルな人物だと、役員や幹部社員が社長にエネルギーを吸い取られてしまい、見た目がパッとしない人物も少なくない。スタートアップ期にはやむをえないのだが、役員や幹部社員もパワフルだと社長と衝突して、空中分解を引き起こしかねないのだ。

社内の全員が光り輝いていれば理想だが、現実はそうはいかない。だが、次の成長段階に進めば、この通弊は解消されてゆく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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