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新旧CEOが泥仕合=後任人事にらみ-LIXIL

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大手住宅設備メーカーLIXILグループの新旧トップが18日、首脳人事をめぐって泥仕合を演じた。創業家出身の潮田洋一郎会長兼最高経営責任者(CEO)は記者会見で、2019年3月期に巨額赤字に陥る見通しとなった原因として、瀬戸欣哉前社長兼CEOの「無策ぶり」を指摘。瀬戸氏更迭の正当性を訴えた。一方、返り咲きを狙う瀬戸氏は、6月の株主総会で議題となる取締役の選任案に関して「潮田氏の影響力をなくすのが必要だ」と全面対決を宣言した。

「11億円の年俸を得ながら赤字を招いた責任をどう考えるのか、大変いぶかしく感じる」。潮田氏は高額報酬で迎え入れた「プロ経営者」瀬戸氏の手腕を、こう切り捨てた。LIXILはイタリア子会社の経営悪化に伴う損失で、19年3月期の連結純損益が530億円もの巨額赤字に転落する見通し。潮田氏は「瀬戸氏は何の手も打たなかった」と怒りをぶつけた上で、瀬戸氏起用を主導した「任命責任」を取るとして、辞任カードを切ってみせた。

一部の株主は、潮田氏と現社長の山梨広一氏の取締役解任を求め、臨時株主総会の開催を要求していた。今回の辞任表明で、潮田氏は解任に追い込まれる事態を回避。瀬戸氏は18日、記者団の前で「話のすり替えだ」と猛反発した。(時事通信 4月19日)

LIXILのCEO人事をめぐる紛糾で、潮田洋一郎氏が表明した任命責任による取締役辞任は、瀬戸欣哉氏を退任させるための自爆テロにも見えるが、創業家として君臨して第一線から距離を置いていた潮田氏は取締役を辞任したところで困らない。

瀬戸氏は業績悪化による引責辞任というバツが付いてしまい、プロ経営者としての値打ちにも影響してしまうから、引き下がるわけにはいかない。

メディアの論調には“反潮田”が目につくが、「11億円の年俸を得ながら赤字を招いた責任をどう考えるのか」という潮田氏の指摘には、瀬戸氏にとっても逃げられまい。赤字の原因となったイタリアのペルマスティリー社を買収したのは潮田氏で、瀬戸氏は関与していないが、CEOを引き受けた以上は経営責任が問われてくる。経営再建は瀬戸氏の任務である。

一方で、この泥仕合からは、プロ経営者のはかなさが露呈された。しょせんプロ経営者はワンポイントリリーフにすぎず、会社に使い捨てされる消耗品のようなものだ。外資系企業のトップを渡り歩くキャリアは傍目には華麗に映るが、本人の胸中には虚しさも去来しているのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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